2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代ヨーロッパの都市と住宅にかんする歴史的研究―田園都市からニュータウンへ―
Project/Area Number |
23320163
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中野 隆生 学習院大学, 文学部, 教授 (90189001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本内 直樹 中部大学, 人文学部, 准教授 (10454365)
北村 昌史 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (20242993)
松本 裕 大阪産業大学, デザイン工学部, 准教授 (20268246)
柳沢 のどか(永山のどか) 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (20547517)
白川 耕一 同志社大学, 付置研究所, 研究員 (40444939)
椿 建也 中京大学, 経済学部, 教授 (50278248)
羽貝 正美 東京経済大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60208410)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 西洋史 / 都市 / 住宅 / 現代社会 / 国際研究者交流、イギリス・フランス・ドイツ |
Research Abstract |
本年度は4度の研究会を実施するとともに、中京大学経済学部附属経済研究所2012年度特別セミナーとして、シンポジウム「1920~30年代のヨーロッパにおける都市と住宅―現代居住の源流を探る―」を実施した。 第1回研究会はゲストを迎え、越澤明「田園都市と田園郊外―日本への影響と田園都市研究の課題―」、長谷川淳一「戦後再建期イギリスのニュータウン候補地の選定問題」をめぐる論議をおこなった。第2回研究会と第3回研究会は中京大シンポジウムへ向けた準備報告を中心にしたが、また小野浩「戦間期の東京における住空間の形成と利用―借家市場の分析を中心に―」を通じて日本史の研究事情に接した。中京大学シンポジウムにおける報告は、椿建也「イギリス両大戦間の住宅と社会―公営住宅の到来と郊外化の進展―」、中野隆生「両大戦間期パリの郊外形成とシュレーヌ田園都市の展開」、北村昌史「ブルーの・タウトのジードルングの社会史―「森のシードルングを手掛かりとして―」であったが、これについては小野浩によるコメントを得た。第4回研究会にはゲスト2名を招き、馬場哲「19世紀末~20世紀初頭のドイツにおける土地政策の展開―フランクフルト・アム・マインを中心として―」および山本理顕「1住宅=1家族」から「地域社会圏」へ」という発表をえ、また岡田友和の「植民地都市ハノイにおける「市民」の形成―1937年の労働者ストライキをめぐって―」を手掛かりに植民地都市について論議した。とくに、山本報告は建築家の考察であり、学際的に視野を拡大する好機となった。また、2013年9月に予定する国際シンポジウムを念頭に、本内直樹、松本裕、永山のどかが準備報告をおこなった。 こうして、本年度は、シンポジウムの実施、国際シンポジウムの準備を進めつつ、学際的にも方法的にも対象地域としても視野の拡大を実現しえた年度であったように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究メンバーは、各自、役割分担にかんして、必要ならヨーロッパへ渡って、調査・研究に従事し、現地の専門家と交流した。 他方、4回の研究会には、経済史学、あるいは建築学・都市計画学の専門家をゲストとして招き、とりわけ都市空間・居住空間にかかわる議論をおこなった。また、中京大学経済学部附属経済研究所特別セミナーとして、20世紀前半ヨーロッパ諸国における都市と住宅をめぐるシンポジウムを実現したことで、歴史的事実や歴史研究の眼差しの国や地域による偏差が明らかになり、このことをメンバーが共有するとともに、いくつかの論点が認識されるにいたった。 こうした共同研究の現状をベースに、平成25年度の国際シンポジウムについては、20世紀後半に重点をおきつつ、日本の歴史的事情を視野にいれて、建築学などを組み込んで未来への展望を視野におさめることとした。こうした方向で、英・仏・独から研究者を招聘する作業を進め、準備報告をおこい、ほぼシンポジウム実現の見通しをつけることができた。また、シンポジウムにもとづく論集の刊行も具体化の努力にもすでに着手している。こうしたなかから、新たな歴史的省察や現実の都市や住宅へ向けた提言など、オリジナルな顎堤な知見や方法が生まれ、社会的にも貢献できることになるはずである。 他方、地理者学や社会学者との交流、英・仏・独以外のヨーロッパ諸国への視野拡大は、なかなか進展せず、依然、今後の課題のままである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査、議論、研究交流などを踏まえながら、国際シンポジウムを準備、組織・運営しつつ、ヨーロッパ(および日本)の都市と住宅について歴史的認識を共有し、新たな展開への道筋を見出すこと、また学的・社会的にアピールすることが、今年度における本科研の重要な課題である。本研究のメンバーは個別に研究活動を充実させて各自の役割分担を果たしながら、国際シンポジウムへ十分な準備をもって臨むこととする。すなわち、研究報告、コメント、司会、運営、等々を担うことはもちろん、自らの学的蓄積をベースとして積極的に討論へ参加し、招聘研究者やゲストスピーカーから豊かな論議を引き出して、シンポジウムの深化・活性化に貢献するのである。また、3名の招聘研究者が個々におこなう講演会にも可能なかぎり参加して、共同研究のさらなる可能性、研究交流の発展を目指すのである。 国際シンポジウムをへたのちは、その経験と成果を社会的に還元して生かすため、論集の作成作業を本格化させる。しかし、他方では、未達成課題として残されている地理学・社会学などとの学際的交流を具体化させ、また英・仏・独以外の欧米諸国やその旧植民地などへと検討対象の地域範囲を一段と広げて、現代における都市と住宅にかんする知見・情報の集約と消化にはかっていく。このようにすることで、本研究が正面から扱ってきた英・仏・独の都市や住宅をめぐる立論、理解にも新たな角度からの照射が可能になるであろう。 こうした模索を多面的・重層的に積み重ねることで、都市や住宅のみならず、ヨーロッパ社会の総合的な歴史像を修正、再構築していくことが可能になり、将来へ向けた有益な提言もなしうるものと考えている。
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Research Products
(13 results)