2011 Fiscal Year Annual Research Report
縄文文化の北方フロンティア-北海道東部地域の環境変化と縄文人の生業戦略
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23320169
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新美 倫子 名古屋大学, 博物館, 准教授 (10262065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 助教 (00571233)
熊木 俊朗 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (20282543)
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Keywords | 生業戦略 / 縄文時代 / 日の出貝塚 / 温根沼貝塚 |
Research Abstract |
平成23年度は、根室市温根沼貝塚の発掘調査と浜頓別町日の出貝塚の測量調査、及びそれらの調査で得られた資料・データの整理を行った。 ○根室市温根沼貝塚の発掘調査と出土資料の整理について 貝層部分を含む遺跡全体の構成を明らかにすることを目的とし、貝層部分の周辺域に50cm×20mのトレンチを、東西方向と南北方向に1本ずつ入れた。その結果、貝層部分の東側に竪穴住居趾と思われる遺構2軒や集石を検出した。これらの竪穴住居趾は、これまで地表からはまったくその存在が予想されておらず、測量調査時にも気づかれていなかった。しかし、貝塚と同じ縄文前期の住居趾やその他の遺構が、遺跡内に多数存在する可能性が示された。調査で出土・採集した遺物は名古屋大学に搬送して整理・分析を行い、その結果をまとめて根室市歴史と自然の資料館紀要24号に「根室市関江谷1竪穴群詳細分布調査報告III」として発表した。また、温根沼貝塚出土資料の年代測定結果については、第77回日本考古学協会総会で発表した。 ○浜頓別町日の出貝塚の測量調査について 日の出貝塚には縄文時代の貝塚と擦文時代の住居趾があることが知られていたが、今年度は平成24年度以降の発掘調査の前提として、遺跡全体の測量調査を行った。その結果、貝層の分布状況や昭和30年代に発掘されたトレンチの跡、多くの擦文時代の住居趾を記録することができた。この測量調査で得られたデータは、第15回動物考古学研究集会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根室市温根沼貝塚では、これまで地表からはまったくその存在が予想されていなかった縄文前期の住居趾やその他の遺構が、貝層部分の東側に多数存在する可能性を示すことができた。浜頓別町日の出貝塚では遺跡全体の測量調査がほぼ終了し、24年度以降の発掘調査の準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
浜頓別町日の出貝塚・根室市温根沼貝塚で発掘調査を行い、調査で得られた資料と釧路市東釧路貝塚・北見市トコロ貝塚の既発掘資料を用いて、資料の年代測定を行うと共に各遺跡形成時の周辺環境を復元し、縄文時代人たちの資源利用状況を分析する。 当初の計画では、根室市温根沼貝塚と北見市トコロ貝塚の発掘調査を行う予定であったが、このうちトコロ貝塚の調査は北見市側の事情で実施が難しくなった。そこで、浜頓別町教育委員会の全面的な協力を得て、浜頓別町日の出貝塚の発掘調査を行うこととした。
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