2012 Fiscal Year Annual Research Report
縄文文化の北方フロンティアー北海道東部地域-の環境変化と縄文人の生業戦略
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23320169
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新美 倫子 名古屋大学, 博物館, 准教授 (10262065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 助教 (00571233)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生業戦略 / 縄文時代 / 日の出貝塚 / 温根沼貝塚 |
Research Abstract |
平成24年度は、浜頓別町日の出貝塚の発掘調査と根室市温根沼貝塚周辺域の分布調査、及びそれらの調査で得られた資料・データの整理を行った。 ○ 浜頓別町日の出貝塚の発掘調査と出土資料の整理について 平成23年度に測量図面を作製した昭和33年発掘の旧トレンチを再発掘し、トレンチの壁面観察・記録を行い、同時に当時採集されていなかった小型の遺物の回収を行った。その結果、貝層の北の端の位置が判明し、このトレンチ部分では貝層は少なくとも長さ20m以上にわたって広がっていること、貝層は北西から南東方向に向かって傾斜して堆積しており、貝層の厚さは撹乱を除いて最も厚い部分で90cmほどであることが明らかになった。貝層はマガキが主体でアサリもかなり含まれており、貝層中には焼土・灰・炭化物も多く混じっていた。調査期間中には浜頓別町下頓別小学校対象の現地授業(総合学習「日の出遺跡について」)を実施し、この調査で得られたデータは、第16回動物考古学研究集会および動物考古学30号で発表した。また、日の出貝塚・温根沼貝塚・トコロ貝塚出土資料の年代測定を行い、それらの結果等を第78回日本考古学協会総会で発表した。 ○根室市温根沼貝塚周辺域の分布調査について 温根沼貝塚から見て温根沼を挟んだ対岸に貝の散布が見られるとの市民からの情報が寄せられたため、対岸地域の分布調査を行った。その結果、 西三番沢が温根沼に流れ込む河口近くの左岸部に貝層を発見した。オホーツク海沿岸地域における4例目の縄文時代貝塚かと期待されたが、採集した貝類の年代測定を行った結果、オホーツク文化期~トビニタイ期の貝層であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
浜頓別町日の出貝塚において、貝塚が予想外に大規模であることの一端を明らかにすることができた。また貝層の保存状態が良好であることや貝塚形成時の地形等も判明し、25年度の発掘調査の方針が定まった。同一層位から出土した木炭と海産試料の年代測定結果から当時の環境にも言及することができ、また動物遺体に関しても昭和33・34年出土資料と今回の出土資料(哺乳類)を併せて縄文時代人たちの資源利用状況を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究課題の最終年度であるので、浜頓別町日の出貝塚で発掘調査を行い、特に貝塚の規模を平面的に明らかにすることを目指す。そして、さらに多くの資料の年代測定を行い、貝類・魚類等の分析も行ううことにより、遺跡形成時の周辺環境や資源利用状況をより細かく復元したい。
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