2012 Fiscal Year Annual Research Report
日韓古代人骨の分析化学・年代学的研究と三国時代の実年代
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23320173
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
藤尾 慎一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (30190010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 康弘 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (40264270)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (50205663)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (60270401)
高田 貫太 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (60379815)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 林堂 / 三国時代 / 炭素14年代測定 / 炭素同位体比 / 海洋リザーバー効果 |
Research Abstract |
平成24年度は,3つに分けていた研究組織のうち,以下の理由から年代測定班に絞って実施した。当初計画にしたがい,夏前に(財)嶺南文化財研究院所蔵の韓国慶尚北道林堂古墳群出土人骨の年代測定用試料の採取を6月6日に実施した。8月には,秋に予定していた(財)東亜細亜文化財研究院所蔵の古墳時代に比定された土器付着炭化物のAMS-炭素14年代測定と,炭素同位体比分析用試料のサンプリングを ,9・10日の二日間にわたって実施した。 採取した試料は,東京大学総合博物館にコラーゲンの抽出を依頼し,得られた資料を民間の測定会社に委託して,年代測定値の報告を得た。これらの分析結果をふまえて平成25年1月5・6日(土・日)に歴博で行われた共同研究会において,(財)嶺南文化財研究院の院長と研究員の二人を招へいし,測定結果の報告会を日本側の研究者とともに実施した。 林堂古墳群は,3世紀から7世紀にわたって古墳が造営され,遺存状況のよい人骨が多数出土している。遺体は追葬が不可能な石室に葬られているので,死亡時と古墳の年代は一致する。よって人骨に含まれるコラーゲンを対象に測定した炭素14年代は,古墳がつくられた年代を反映するとみることができる。しかし,林堂の人骨は表面上の依存度の良さに比べて,コラーゲンの残りが予想以上に悪く,測定できたのは6点,うち良好なデータを示したのはわずか3点にとどまったので,さらに別の遺跡出土の資料を対象とした測定値を増加しなければならない。 4 ただ6世紀に関しては,日本列島同様,韓国の試料も国際的な基準であるIntCal04ではなく,日本の木材の年輪年代を本につくられた日本版の較正曲線(Japanese Caribration Curve),略してJcalの方が整合的な年代を求めることができることを確認できたことは大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度の慶尚南道金海市礼安里古墳群から出土した人骨の年代調査は,多くの測定値を得ることができたが,24年度の林堂古墳群出土人骨の年代調査はコラーゲンの遺存が悪く,得られた測定値の数が少なかったため,統計処理に必要な数を確保するには到らなかった。統計処理には型式ごとに10点程度の測定値は必要なため,さらなる測定値の増加が必要である。 また共同研究員の一人が年度当初に倒れ,復帰が秋までずれ込んだことに起因する,年代測定班以外の調査の遅れも,やや遅れている原因の1つである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる25年度はさらなる年代測定値の増加を目指して,新たな古墳出土人骨の測定と,軟質土器に付着する炭化物やウルシ,木材などの測定も加速することにより,統計処理に必要な時期ごとの測定数を確保する。 同時に,考古学相対編年班については,韓国の3~7世紀の古墳と共通する副葬品をもつ東日本の古墳出土資料の考古学的調査を行い,相対編年を整備する。 また当初予定していた胎土分析については,担当者の健康上の理由もあり,実施しないことにする。
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Research Products
(2 results)