2012 Fiscal Year Annual Research Report
「失われた10年」の人文地理学的検証-地域経済のジェンダー分析を通じて-
Project/Area Number |
23320183
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉田 容子 奈良女子大学, 研究院人文科学系, 准教授 (70265198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
影山 穂波 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00302993)
神田 孝治 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (90382019)
西村 雄一郎 奈良女子大学, 研究院人文科学系, 准教授 (90390707)
村田 陽平 近畿大学, 文芸学部, 講師 (10461021)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 「失われた10年」 / 地域経済・地域社会 / 地域の再生 / 家族 / ジェンダーの視点 |
Research Abstract |
本研究では,「バブル経済」崩壊後に迎えた平成不況(「失われた10年」)に続いて長引く景気の低迷(現在は「失われた20年」ともいわれる)によって,地域経済の落ち込みが著しい北海道内の旧炭鉱地域をはじめ,道内の鉄鋼や造船,観光産業に依存してきた地域を対象に調査を進めている。地域経済の破綻は,雇用面に大きな影響をもたらしたのみならず過疎地域の高齢化に拍車をかけた。また,重工業部門で正規男性労働力が削除される一方,フレキシブルな労働力として非正規採用される女性の増大は,従来の性別役割分業を変化させた。それにともない,福祉や消費の面でも新しい局面を迎えている。こうした状況の打開策の一つに,本州の都市部から道内への移住を誘致する動きが行政側にある。本研究の目的は,上記の諸点を具体的に明らかにし,経済地域の再生を模索することである。 昨年度に続き,本年度も夕張市で調査を実施した。炭鉱産業からの脱却をはかるべく観光産業に力を入れた夕張行政が財政破綻していく過程において,とくに旧炭鉱労働者に着目した。年齢の若い労働者たちは,新たな就業先を求めて夕張から流出したが,中高年労働者たちは旧雇用先からの補償を頼みの綱に,夕張にとどまった。夕張市が,炭鉱住宅や病院などの旧炭鉱企業の施設を肩代わりしたことが,閉山後も中高年の炭鉱労働者を夕張に留める要因となった。観光産業を推進させる一方で,市内への工場誘致を進め,旧炭鉱労働者や女性の就業先を生み出した。かつては男性の炭鉱労働による収入に大きく依存していた夕張の多くの世帯が,女性の労働収入を必要とするようになったのである。観光産業の失敗から財政破綻した同市では,人口流出に拍車がかかっているが,旧炭鉱住宅に入居し続ける高齢者にとって,年金に依存した同市での生活が最後の砦となっている。高齢化が進む同市では移住者誘致に着手したところで,今後の政策が注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に予定していた現地調査は,ほぼ予定どおり実施することができた。 文献資料の収集や北海道庁など行政機関への聞き取り調査は冬季でも可能だが,夕張市などでの現地調査は,冬季期間中,天候・交通面で困難な場合があった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は,夏季期間における調査地域での滞在日数を長く確保し,地域住民へのアンケートおよび聞き取り調査を実施して,質的データの収集をはかっていく(夕張市での調査については,すでに実施の目途がついている)。 夕張市以外の調査地域として室蘭市を取り上げる予定である。 北海道内の市町村が取り組んでいる移住者誘致については,夕張市をはじめ,積極的な対策を打ち出して業績を積んでいる他の自治体へも調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)