2011 Fiscal Year Annual Research Report
市民参加型司法プロセスにおける「情報的正義」の構築に向けた学融的実証的研究
Project/Area Number |
23330005
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 達哉 立命館大学, 文学部, 教授 (90215806)
藤田 政博 関西大学, 社会学部, 准教授 (60377140)
堀田 秀吾 明治大学, 法学部, 教授 (70330008)
渕野 貴生 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20271851)
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Keywords | 裁判員 / 評議 / 裁判前報道 / 取調べ / 可視化 / 量刑 / 法と心理 / 法と言語 |
Research Abstract |
初年度は、第一に、研究プロジェクトの中核となる、新しい観念「情報的正義」のコアと周辺を措定することに力点が置かれた。そして、第二に、そうした観念を用いることで様々な判断過程において生じるバイアスの是正を目的として判断者に与える情報の質や量をコントロールする制御過程の正当性を主張できることを仮説的に提示することにメンバーが集中的に取り組んだ。 第一について具体的には、社会心理学の研究で既に海外において「情報的正義」と言語的には同様の意味を持つ"informational justice"という語彙が使用されていたことから、いかなる文脈や意図からかかる用語が使用されていたのかを明らかにすることに取り組んだ。 これまでのところ、われわれが意図する「情報的正義」の言葉の使用目的である司法過程におけるバイアス是正との相違を確認することが一定程度可能になった。 第二については、プロジェクトの各班において取り組まれている刑事司法、とりわけ市民参加型司法である裁判員裁判に関わる様々な局面、手続段階において、「情報的正義」概念を用いることにより、警察官(取調官)、検察官(公訴官)、裁判官・裁判員(事実認定者)において生じるバイアス(偏見、予断等)の回避や抑制のメカニズムを説明しやすくなること、その制御過程の正当性を主張しやすくなることを論証する作業に取り組んだ。 内外の学会において、われわれの取り組みを紹介することにより、他の研究者から好意的なフィードバックを得られたと感じている。とりわけ、2011年に名古屋大学で開催された「第11回法と心理学会」においておこなったワークショップには予想を超える多数の会員の参加があり、会場が満杯となるほどの注目を集め、「情報的正義」概念の有効性に関心が寄せられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内外において研究グループによる研究発表(ワークショップ主催)が順調に積み重ねられている(国際学会で2回、国内学会で1回)こと、各自の研究成果の発表(論文、著書、内外での学会報告や招待講演)も相当数おこなっていること。「情報的正義研究会」を開催し、研究グループ外の他分野の研究者と意見交換を重ねていること。
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Strategy for Future Research Activity |
「情報的正義」概念の精緻化を進め、法と心理学あるいは関連領域での有効性を確認する実験調査を更に進捗させる。その後、この観念が広く社会科学、人文科学において共有されるように情報発信を続け、他分野の研究者との対話を積極的に進めていく。
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Research Products
(25 results)