2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世及び近代の日本における「領域」・「国境」概念に関する統合的研究
Project/Area Number |
23330016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柳原 正治 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60143731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
明石 欽司 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (00288242)
深町 朋子 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (30310014)
韓 相煕 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30380653)
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Keywords | 領域 / 無主地 / 琉球処分 |
Research Abstract |
本年度においては、まず近世日本の対外関係のあり方、「版図」概念についての検討を主として行った。その際の一つの重要な史料となるのが、江戸時代の儒学者伊藤東涯が享保14(1729)年に出版した『秉燭譚』である。そのなかで展開される「版図」と「化外の地」の区別が、「疆域」などといった中国や朝鮮の伝統的な「領域」観と同一なのか、あるいは異なっているのか、という点が第一の検討課題であった。 この問題の検討のために、大韓民国・翰林大学校翰林科学院のKim Yongkoo教授および香港港市大学の林学忠教授を招聘してミニ・シンポジウムを福岡で開催した(林教授は繰越年度の平成24年度に2度招聘した)。そのなかで、これらの概念はかならずしも日中韓で完全に一致するものではないことが判明し、今後なお、それぞれの一次史料に当たりながら綿密に確認していく作業が必要があることになった。 2つ目の検討課題は、「幕府撰日本図」である。これは江戸幕府の国絵図事業として作成されたものである。本年度の検討で、幕府撰日本図に描かれていることでただちに日本の「版図」とみなされると短絡的にとらえることはできないことが改めて確認された。朝鮮半島の南端が描かれることがどのような意味を持つのかについてはさらなる検討が必要であることが確認された。 3つ目の課題は、近世日本の「対外」関係である。これについては、「4つの口」、「異国」と「異域」、「通商の国」と「通信の国」概念についての検討を行った。そのなかで、「4つの口」の考えは、近藤重蔵の「松前蝦夷地処置並ニ異国境取締ニ付建言書草案」(寛政9〔1797〕年作成と推定される)のなかですでに見られることが指摘された。蝦夷地および琉球については、なお、「異域」なのか、「異国」なのか、「通信の国」なのかについて、精査していく必要も指摘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初年度計画で予定していた研究計画は3つの項目に及ぶがそれぞれの項目についての研究はほぼ達成できた。最近の日中関係の影響もあって、中華人民共和国チームとの連携は必ずしも順調ではなかったが、香港チームの協力を十分な形で得られたので、研究計画は順調に実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、中華人民共和国・清華大学チーム(代表者・Lu Xiaojie教授)、香港・香港大学チーム(代表者・Anthony Carty教授)および香港城市大学チーム(代表者・林学忠教授)、そして大韓民国・翰林大学校翰林科学院チーム(代表者・Kim Yongkoo教授)との連携を可能な限り、図っていきたい。
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