2011 Fiscal Year Annual Research Report
私法関係の形成における書面の機能と法律専門職の現代的役割
Project/Area Number |
23330026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横山 美夏 京都大学, 法学研究科, 教授 (80200921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 毅 京都大学, 法学研究科, 教授 (80215673)
山本 克己 京都大学, 法学研究科, 教授 (20191398)
林 信夫 京都大学, 法学研究科, 教授 (40004171)
伊藤 孝夫 京都大学, 法学研究科, 教授 (50213046)
齋藤 真紀 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60324597)
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Keywords | 書面 / 法律専門職 / 証拠力 / 執行力 / 意思形成支援 |
Research Abstract |
本研究は、私法関係において書面の作成・保存が求められる目的および書面が果たす役割を再検討することを通して、合理的な書面制度を模索しようとするものである。 研究初年度の成果は、次のとおりである。 1書面要件の適切性に関する総論的研究として、会社の定款、事業用定期借地契約、任意後見契約等公正証書の作成が要求される場合について、その理由と他の方法による可能性を検討した。そこでは、当事者の意思形成支援および形成される法律関係の適法性の確保の面から中立の法律専門職の関与が求められていること、我が国では中立の法律専門職は公証人のみであるとされていることが理由となっているところ、とりわけフランスとの比較研究から、行為規範の定め方次第で弁護士等の他の法律専門職の書面作成への関与による代替可能性があると考えるに至った。これは、商事仲立人の規律を考えれば、我が国でも十分ありうると考えられる。 2各論的検討として、各種の非営利法人と会社においてガヴァナンスのために要求される書面について検討し、書面の作成が所轄庁等の外部機関による公的監督に代替する機能を担っていることを確認した。これは、とくに規模の大きくない一般社団法人・一般財団法人において、会社と同等の書類の作成・保存の負担が過大であると考えられる場合、外部機関による監督体制の整備によって代替する可能性を示唆しているとも考えられる。 3同じく各論的検討として、ローマ法、明治初期における我が国、現在の我が国における書面と執行力の付与との関係について検討した。ここでは、法律専門職をはじめとする人証から書証への転換過程を追うことにより、証書が公正証書であることは執行力付与の当然の前提となるわけではないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、書面の目的・機能に関する従来の理解の問題点を洗い出し、集中的に検討すべき論点の絞り込みを主として行うこととしていた。「研究実績の概要」に述べたとおり、書面の目的・機能には歴史的にも比較法的にも揺らぎがあること、法律関係の明確化や証拠の維持という機能はたとえば法律専門職の適切な介在等の代替的方法によっても実現されうることが確かめられた。また、次年度以降の研究項目の絞り込みも、「今後の研究の推進方策」に述べるとおり、行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を踏まえて、次の項目について検討を進める。(1)書証と人証の関係の再検討。(2)非営利法人と会社のガヴァナンスにおける書面の役割の検討、(3)訴訟および権利の強制実現手続における書面の証拠力の再検討、(4)法律専門職の新たな理解の可能性。初年度の研究成果から、以上の検討のうち、とくに(1)と(4)については比較法的・歴史的アプローチが、(3)については法制史的アプローチが有用であると考えられるため、今年度以降、この点についての比較法的研究、法制史的研究をさらに深化させる。なお、当初の研究計画に記載していた信認関係については、性質の大きく異なる多岐にわたる関係が含まれるため、そのすべてを取り上げることは困難であると考えるに至ったため、(2)の組織法に関する研究のなかで検討を進めることとする。
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Research Products
(4 results)