2012 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの紛争解決制度と法発展―比較法学・法社会学の連携による海外学術調査
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23330033
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
金子 由芳 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10291981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
草野 芳郎 学習院大学, 法学部, 教授 (70433711)
栗田 誠 千葉大学, その他の研究科, 教授 (20334162)
角松 生史 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90242049)
松永 宣明 神戸大学, その他の研究科, 教授 (80127399)
斉藤 善久(押見善久) 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (10399785)
川畑 康治 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (10273806)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アジア法 / 紛争解決制度 / 土地紛争 / 災害法 / 中小企業法 / 競争法 |
Research Abstract |
本研究はアジア諸国の法整備の課題を、欧米の法整備支援ドナーが提供する制度モデルの単なる「移植」ではなく、現地社会経済の動態の側から探求する意図に立ち、静的な法制度と社会的ニーズとの矛盾が最も熾烈に立ち現れていると考えられる紛争解決現場の動向に着眼する。方法として、比較法的な実定法・判例研究を踏まえつつ、紛争当事者・法曹への聴き取りを中心に法社会学的観察手法を組み合わせる。対象諸国としてとくに、アジア通貨危機以降の欧米ドナーによる救済融資コンディショナリティの拘束のもとで立法改革・司法改革を続けてきたタイ・インドネシア、また市場経済改革を旨とする法整備支援の受入れ国であるベトナム・ラオスを中心とする。問題領域としてはとくに実定法と社会規範との対峙著しい、土地紛争、環境・災害紛争、中小企業取引・雇用紛争に焦点を当てる。研究体制では、日本側のアジア法研究者と開発経済学者の連携を軸に、現地研究者と連携する。 平成24年度中に、第一グループは、日本の制度状況を踏まえた比較検討目的で調査票(テンプレート)を作成し、タイ・インドネシア他の研究協力者による回答を得、現地調査を実施し、また海外研究協力者を日本(神戸・岩手)に招へいしワークショップを実施した。第二グループは、ベトナム投資計画省・商業省・ハノイ法科大学などとの連携により情報収集を行い、外圧を受けながら変遷する中小企業政策・競争政策・労働法制の方向性について検討を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23~24年度に現地側研究協力者の積極的な協力を得て、現地調査並びに国際比較のためのテンプレート作成、さらに日本における研究ワークショップ開催(H24年12月)などほぼ予定通りに順調に進行した。以上の成果還元の意図で、年度中に神戸・岩手・中国・タイ他で研究報告を積極的に実施するとともに、平成25年5月に東京における学会ミニ・シンポジウム開催、ボストンにおける国際学会にてセッション開催などの共同目標を設定し、報告期日までに各自が研究論文を準備するなど、ほぼ順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は3年間の研究計画の最終年度であり、現地追加調査を通じて調査結果を整理しつつ、国際学会・研究会での報告・討論を通じて成果を公表し、最終的に報告書を執筆する。 現地追加調査は、第一グループは、タイ・インドネシア・ラオス他を対象に、伝統的な農地・森林の土地利用や沿岸漁業などの生活基盤をなす利用権秩序が、災害復興計画や森林利用許可制度といった制定法を盾にした開発優先の国家政策と対峙する地域に接近し、法的な問題構造を解析するとともに、いかなる法的な解決手段が模索されているかを探求する。タイのチュラロンコン大学・タマサート大学・司法省、インドネシアのシャクアラ大学・ランプン大学、ラオス司法省などの研究協力先による支援を得て行う。第二グループは、ベトナム投資計画省・ハノイ法科大学などとの連携により情報収集を行い、外圧を受けながら中小企業政策・競争政策の方向性を模索するベトナム政府の制度状況を点検し、他方で中小企業や外資企業への聴き取り調査を重ね、制定法と運用の乖離状況への注目を通じてベトナム独自の法制度の展開方向を探る。 以上の調査結果を踏まえた報告書をグループ毎に執筆し、年度内に刊行予定である。
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