2013 Fiscal Year Annual Research Report
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23330065
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
赤尾 健一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30211692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上東 貴志 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30324908)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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Keywords | Convex-concave 成長関数 / Critical capital stock / 地球環境問題 / 微分ゲーム / 経済動学 |
Research Abstract |
本年度は、 (1)経済に多大な被害をもたらす不確実性を取り入れた動学モデルを作成分析した。それによって要望的行動が異時点間の代替弾力性の大きさに依存することを明らかにした。この問題は近年実証分析で関心を集めているもので、深刻な災害の起きる頻度の高い地域ほど長期の経済成長率が高くなるという結果が、クロスカントリ、あるいはパネルデータの分析から知られている。その解釈として、実証研究の論文では、災害が物的資本から人的資本への資源配分をもたらすためといったことなどが指摘されている。しかし正式の理論分析は行われていなかった。この研究で明らかにしたことは、そうした生産面での要因よりも、むしろ選好面での反応として、貯蓄率が災害の発生頻度によって変化し、その結果、経済成長が促進されることである。 (2)凸凹生産関数をもつ最適成長モデルにおいて、critical capital stock (Skiba Point) が最適定常解となりうることを明らかにした。この結果は従来知られていなかったものである。また、この結果の現実経済への含意は、その水準を下回ると低位(望ましくない)均衡に最適経路が収束する閾値(これがcritical capital stock である)の位置を選好と技術条件(生産関数)の性質から知ることができることである。すなわち、生産関数の凸部分にあり、限界生産性が割引率と一致する資本レベルがcritical capital stock となる。このようなケースはロバストである(わずかな摂動に対して性質が失われることはない)ことも示すことができる。 (3)昨年度に引き続き、non-geometric discounting モデルの性質について研究した。コミットメントが不可能なモデルにおいて複数均衡解の存在とサンスポット均衡の存在を証明した Sorger の研究の拡張を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階で掲げた5つの課題のうち、(2)非凸性に起因する環境資産の突然かつ急速な変化(レジームシフト)、(4)不確実性の下での通時的費用便益分析あるいは適切な意思決定ルールについては、関連する研究成果を得ることができている。 また、(1)国際交渉等に見られる共有資産を巡る戦略的依存関係から生じる多均衡 、(3)超長期にわたって影響をもたらす現象に対する時間割引のあり方についても分析モデルを作成する準備が進んでいる。 最後に、(5)持続可能な開発という価値基準と経済学的最適性が両立するための条件 は、以上4項目を総合した考察であり最終年度に取り組めばよいと考えている。以上、研究を進める順序は当初計画と異なるものの、残る2年間で当初の目的を実現できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
凸凹生産関数をもつ最適成長モデルについては論文の完成を目指す。Non-geometric discounting のモデルについては、それを取り入れた環境経済モデルの作成と分析を行う。多均衡の扱いについては、引き続き global game の文献を研究する。研究成果は速やかに国際雑誌に投稿する。
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