2012 Fiscal Year Annual Research Report
市場構造、所有権と責任に関する制度と環境規制の経済分析
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23330087
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 圭介 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (50411385)
神事 直人 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60345452)
黒田 知宏 名古屋学院大学, 経済学部, 准教授 (60377059)
馬奈木 俊介 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (70372456)
武智 一貴 法政大学, 経済学部, 准教授 (80386341)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 市場構造と規制 / リサイクル政策 / ITQと技術選択 / 循環資源貿易 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)市場構造と政府の政策:寡占市場における企業が非対称的に差別化された財を生産する時、ライバル企業の数が変化すると補助金に関して政府の最適な政策の符号が異なってくることを明らかにした。これは、環境規制の分析につながる重要な成果である。 (2)リサイクル規制と複数の市場の異質性:第1に、貿易が行われているもとで、最適なリサイクル政策を理論的に明らかにした。特に、輸入国の廃棄物政策、およびリサイクル政策がその意図どおりに機能していない場合における輸出国が採るべき最適な政策パッケージを導出した。第2に、同じ貿易分類であっても、異なる国から輸出される廃棄物は異質であることを、貿易データを用いて実証した。これによって、一律の輸出規制ではなく、個々の輸出国の廃棄物の品質に応じたリサイクル規制や輸出規制が望ましいことが明らかとなった。第3に、異なる市場間の取引においては輸送費が重要なファクターであることを実証した。廃棄物については輸送費が相対的に大きいため、この結果は、リサイクル関連規制の国際ルールの設定に対して重要な示唆を持つ。 (3)総量規制と技術選択:ITQ制度と漁獲技術選択の関係性の分析をより発展させ、ITQ制度と生産資本市場(漁船等の漁獲技術)の流動性の観点から追加的に経済実験を実施した。生産資本を変更する機会がランダムに与えられ、資本の流動性が低下した場合でも漁獲枠の取引価格は理論的な均衡価格に収束するとともに、社会的に望ましい資本(技術)選択が実現されることが実証された。漁獲をする権利の配分とその取引市場が、一定の制約のもとでも機能することを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、市場構造や企業行動を考慮に入れたうえで、所有権や責任制度の在り方と環境規制との関連を明らかにすることを目的としている。この目的の達成という観点から、市場構造や企業行動と政策の関連性については、順調に研究成果をあげることができている。特に、複数市場間の異質性や、不完全競争における政策については、新しい結論を得ることができている。 また、利用権の取引市場の機能という観点からは、当初想定していたよりも多くの経済実験を行ってきている。この結果、技術選択の制約のもとでも、市場が効率的な利用権の配分を実現できる可能性が高いことを明らかにしている。さらに、食品や健康情報に関する規制のベースとなる、企業の広告の選択についても理論的に明らかにすることができている。したがって、市場構造、企業行動と規制という観点からは、予定していたよりもやや早いペースで研究が進行している。 一方で、所有権や責任制度を明示的に理論モデルに取り入れた分析については、当初想定してたよりはやや遅れている。しかし、上記の通り市場構造と規制についての分析やサーベイが進んでいることから、所有権や責任制度の分析を進めるためのベースは整いつつある。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、特に所有権や責任制度を理論モデルに明示的に取り入れることに焦点をあてて、理論分析を進める。また、環境関連規制の国際ルールの分析にもとりかかる。 分析の方法、ミーティングの実施などについては、これまで大きな問題は発生していないことから、これまで通りのやり方で実施していく。ただ、成果を着実に上げていくという観点から、メンバーによる研究発表のミーティングを年2回に増やして実施していく。 経済実験については、これまでかなりのデータの蓄積があるため、それらの分析を進めることに集中する。データが不足していると判断した場合には、補足実験を行う。 学会などにおける成果発表については、平成24年度までと同様に積極的に行っていく。
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Research Products
(17 results)