2011 Fiscal Year Annual Research Report
輸出志向工業化とアジアの経済発展――空洞化の実証研究
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23330096
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿部 茂行 同志社大学, 政策学部, 教授 (60140076)
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Keywords | 空洞化 / 地域統合 / 雁行形態 / サプライチェーン / 多国籍企業 |
Research Abstract |
空洞化に関する文献調査を主に日米に焦点あてて行った。また台湾についても調査を始めている。1985年以降日本と同様に通貨が高騰し、労働集約産業から海外直接投資が始まり、またたくまに傘や靴産業は台湾から消えた。空洞化が起こるのではなく、新規産業が発展し雇用はそこで吸収され、深刻にはならなかったことが分かった。 また、空洞化指標の作成に関しては、日本の統計を使って、海外生産比率を業種別に時系列で整理し、空洞化の一つの指標として使えるようにした。空洞化は国内における雇用機会の喪失、地域産業の崩壊、国際競争力の低下といったことを伴うと指摘されることからも、これらの統計も収集し、総合指標を作成する途上である。 アジアにおけるサプライチェーンの実態を明らかにするために、UNCOMTRADEのデータをHS7桁で収集し、分野別・貿易相手国別に整理に取りかかっている。これまでの輸出志向工業化では、そのプラスの側面ばかりが強調されてきた嫌いがある。昨今の経済危機は輸出志向工業化の脆弱性を露呈した。アジア諸国はこの工業化戦略の結果、欧米を市場としたサプライチェインを形成し、欧米がこけるとアジア諸国すべてが不況に陥るという構造を作り出した。この事実をUNCOMTRADEの詳細なデータから、部品・中間財と最終財に区別し、貿易の実態を明らかにした。ことに「欧米の最終財需要の落ち込みを域内需要が相当部分カバーできるようになってきている」という主張に対しては、中間財と最終財を合わせればそのような動きがあるが、最終財だけでみるとまだまだ域内需要は伸びていないことを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空洞化に関する日米に関する予備調査は順調に進み、台湾に関しても予備調査を開始することができた。空洞化指標の作成に関しても、基本的なところはほぼ完成している。予備的計量分析は緒に就いたばかりである。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査は引き続き、台湾・韓国・タイについて行う。タイについてはヒアリング調査を開始する。空洞化指標は引き続き完成度を高める努力をする。予備的計量分析のフレームワークを完成させることが今後この研究を推進していく重要な項目である。
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