2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本型金融システムの再評価:メインバンク制の視点から
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23330109
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
堀 敬一 立命館大学, 経済学部, 教授 (50273561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤崎 正敏 立命館大学, 理工学部, 教授 (20047492)
赤堀 次郎 立命館大学, 理工学部, 教授 (50309100)
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70423043)
播磨谷 浩三 立命館大学, 経営学部, 教授 (90347732)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ファイナンス / メインバンク / 契約理論 / 確率過程 |
Research Abstract |
平成24年度は「動学的な契約理論」、「メインバンク関係の選択」、「メインバンクと企業のパフォーマンス」の各研究グループで一定の研究成果および萌芽的なアイデアの提案が行われた。動学的な研究理論のグループでは、行動経済学的な視点を考慮した動学的な契約理論を構築した。情報の非対称性を仮定した連続時間モデルでは、経済主体が直面する情報集合が異なるため、測度変換の手法の開発がより一般的な分析を可能にする。この点で熱伝導方程式の応用やギルザノフの定理に対する新たなアプローチは今後の分析に有用であると考えられる。 メインバンク関係の選択においては銀行等、金融機関のパフォーマンス自体が企業のメインバンクの影響を与える。この点に関して、地方銀行と第二地方銀行の経営効率性が借り手の倒産確率に有意にに影響を与えることを示している。また銀行による保険商品の窓販売解禁により、保険会社の経営が影響を受けることも明らかになった。したがって金融機関が地域経済に与える影響を、銀行機能に限定して分析することの限界も明らかにされた。 メインバンクが企業のパフォーマンスに与える分析については他の研究課題と比べると、まだ明確な研究実績が得られていない。しかしながら上場企業を対象とした各企業のメインバンクの選択を見る限り、メインバンクは基本的に固定的であり、借り手企業の業績を大きく左右している可能性は低い。したがってメインバンクが企業のパフォーマンスに対して、どのようなチャンネルで影響を与えているか、慎重に分析しなければならないと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究グループにおいて、既に数本の学術論文を査読つき学術雑誌に刊行している点では、本研究課題の当初の計画はおおむね順調に進展していると言える。また学術論文の刊行という段階には至っていないが、いくつかの研究企画が完成の途中段階にあり、学会、研究会等で報告が行われていることからも、本研究計画の進行が順調であると判断される。 特に本年度にフィレンツェ大学で開催された「The Fifth Florence-Ritsumeikan Workshop on Stochastic Processes and Applications to Finance and Risk Management」は、本研究グループが中核を成す立命館大学ファイナンス研究センターとフィレンツェ大学との共催のコンファレンスで、ここで本研究グループのメンバーを含む多数の研究報告が行われたことには大きな意味があったと考える。この研究会では世界的に著名な研究者を交えて、企業金融から確率過程までファイナンスに関わる幅広い研究者が一堂に会し、各研究者による報告に対して活発な議論が行われたからである。こうした幅広い分野の研究者が参加した研究会における議論は、本研究課題のグループ間の共同研究の活性化に対して有益であると考えられる。 その一方で、メインバンクと企業のパフォーマンスに関する分析は、他の2つのグループの研究課題と比べると、研究の開始段階からやや停滞している感があり、今後の活性化のために研究資源を集中して投入する必要があるように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初の計画に従い、各研究グループにおける研究課題の遂行に努める。メインバンクと企業のパフォーマンスに関する分析がやや立ち遅れているので、この領域への研究資源の投入を強化する。具体的には、一定の成果を得られたメインバンク関係の選択に関する分析を一旦終了し、メインバンクと企業のパフォーマンスの分析に集中するか、あるいは2つの研究グループを統合することを検討する。 本年度は、各グループ間の共同研究を模索する年度であったので、今後はそこでの議論の成果を踏まえ、各グループにおける研究成果を以下に高水準にするか、留意して分析を行う。具体的には、各グループ内での研究に加え、セミナー、研究会等を開催する。また国内外での学会、研究会での報告を積極的に行う。
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Research Products
(10 results)