2011 Fiscal Year Annual Research Report
体験談の国際比較研究-物語の構造化を用いた計量的アプローチ-
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23330159
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川端 亮 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00214677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弓山 達也 大正大学, 人間学部, 教授 (40311998)
黒崎 浩行 國學院大学, 神道文化学部, 准教授 (70296789)
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Keywords | 社会学 / 宗教学 / 宗教社会学 / 社会調査 |
Research Abstract |
今年度は東京で8回、京都で1回の研究会を開催し、体験談を研究する方法論を検討し、それに基づいて予備調査を実施した。当初、研究費の3割が使用できない可能性があったため、時間のかかる英語の体験談の収集や体験談プロセス図の作成などを行うことができず、その間の方法論の検討から信念変更の数理モデルを発見し、当初の計画を変更し、日本において2012年の1月から2月にかけて、同一対象者に2度にわたってインターネットによるパネル調査を実施した。 調査対象者は、20歳代後半(25-29歳)と40歳代後半(45-49歳)の男女に限定し、まず、信仰区分を問うスクリーニングを行い、「宗教は嫌い」と答えた人を除いて、「信仰あり」、「信仰はないが宗教には関心あり」「信仰もなく、関心もない」の3カテゴリーの人を対象とし、3カテゴリーが、性別、年齢や後の提示パターンなどで均等になるように割り当てた。 第1回目の調査で、宗教意識や宗教の寛容性についての意識項目と、学歴、職業などの属性を問い、3週間後に、3種類の短い体験談を2種類のパターンで提示し、体験談に対する共感/拒絶などの反応を調査するとともに、体験談提示前(1回目調査)と提示後(2回目調査)によって、宗教的な考え方に変化がみられるかを確かめた。収集した998ケースのデータを分析したところ、男性、若い人、自営業の人が体験談を受け入れやすいことや、体験談を読むとそれに関連する宗教概念の受容度は上がる、体験談の種類と提示の仕方による交互作用がみられることなどが、これまでの分析で分かった。体験談提示前後による宗教的な考え方に変化の検討は、信念変更の数理モデルによって解釈可能であることが、今年度当初計画にない大きな進展である。今後、より詳細な分析を行い、その結果を来年度実施予定の日米比較調査の基礎的データとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
体験談の要因を組み合わせて、対象者に提示し、共感/拒絶を調べるという本研究の目的は、体験談研究では未だ試みられていない、新しい調査方法であるが、それが本年度の日本の予備調査によって、十分な基礎データが提供できると分かった点は計画通りであるが、体験談提示前後による宗教的な考え方に変化の検討は、信念変更の数理モデルによって解釈可能であることが、今年度当初計画にない大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、体験談の要因を組み合わせて、対象者に提示し、共感/拒絶を調べる日米調査を実施する。調査票には、体験談の受容と属性、寛容性や宗教的多元主義などの項目を取り入れ、多元主義の理論、信念変更の定式化の数理モデル、宗教的体験談受容の計量分析などに寄与できる調査とする。 現在、円安傾向にあり、アメリカでの調査費用が見積もりにくいという問題点があるが、調査の早期の実施と調査対象者数の調整で、この問題に対処する予定である。
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Research Products
(4 results)