2012 Fiscal Year Annual Research Report
近世東北日本の世帯とライフコース:二本松地域と村山地域の比較から
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23330165
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
黒須 里美 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (20225296)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歴史人口学 / ライフコース / 家族 / 人口史料 / イベントヒストリー分析 / 東北地方 |
Research Abstract |
本研究は近世から近代移行期における東北日本に着目し、二本松地域と村山地域に残存する良質な人口史料を利用することから、庶民の結婚、出生、死亡、移動を中心としたライフコースを比較分析し、直系家族システムにおける世帯と個人の人口学的行動とのつながりを明らかにすることを目的としている。2年度として昨年に引き続き、麗澤大学人口・家族史研究プロジェクト室を研究拠点とし、具体的には以下の3点を中心に進めた。 (1)データ入力とデータベース構築:陸奥国安達郡南杉田村人別改帳の入力を継続した。昨年度の個人静態情報の入力を完成させ、見直しを進めるとともに、世帯の持高情報の入力を開始した。貸し借りを含む詳細情報であるため、入力方法を検討しなおし、個人入力プログラムとは別のエクセル入力を利用した方法を開発して行った。 (2)村山地域の資料収集: 同じ東北にありながら飢饉の影響や対策、また人口学的行動などに大きな違いのある村山地域と二本松地域の地理的な環境と集落の状況などを理解することは重要である。本年は村山地域を中心に現地調査を行った。天童市・山形市周辺の資料館・社寺を中心にフィールド調査を行い、特に紅花を中心とした村山地域の経済発展や労働体系についての理解を深めることができた。 (3)二本松藩内の比較分析: 本年は移動、出生、養子というイベントに焦点をあて、イベントヒストリー分析を利用した成果を学会で発表した。日本人口学会大会、Social Science History Association大会においては農村の人口史料を利用し、養子・婿養子のパターンとその要因、社会経済階層と移動のパータンとその要因についての成果を発表し、分析結果の解釈をめぐる議論から様々なアドバイスを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析用データ構築がなされている村々についてのイベントヒストリー分析はほぼ予定通り進み、興味深い成果があがっている。やや遅れているのは二本松地域の1農村(南杉田村)の入力である。これは当初の予想以上に史料に詳細情報が含まれており、複雑であるためである。また二本松地域内の町村比較は進んでいるが、村山地域と二本松地域の比較については、両地域の史料的また地理的違いもあり、比較分析に予想以上に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(H25)は、入力と比較のためのデータ構築を推進する。上記にあげた二本松地域の南杉田村の問題については、史料内容を選択し、入力の効率化を工夫する予定である。基本人口指標を算出し、これについては他の二本松地域との比較を試みる。このほか村山地域の山家村の補充入力内容をチェックし、その他の村々とともに分析指標の構築を行う。最終年度(H26)に向けて、村山地域と二本松地域の比較分析モデルが構築できるように、連携研究者の協力を得て本格的な比較研究を進めていく予定である。
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