2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本及びアジア・太平洋地域における環境リスクと環境的公正の比較環境社会学的研究
Project/Area Number |
23330168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
寺田 良一 明治大学, 文学部, 教授 (00163923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舩橋 晴俊 法政大学, 社会学部, 教授 (30130751)
堀田 恭子 立正大学, 文学部, 准教授 (20325674)
藤川 賢 明治学院大学, 社会学部, 教授 (80308072)
堀畑 まなみ 桜美林大学, 総合科学系, 准教授 (40348488)
原口 弥生 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20375356)
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Keywords | 環境社会学 / 環境リスク / 環境的校正 |
Research Abstract |
本研究の目的は、いまだ環境社会学的な実証研究が十分行われていない環境リスクの社会的認知や問題構築の機制を、日本及びアジア・太平洋地域という、環境負荷等が移転しうる範域を視野に入れ、経済格差や環境規制格差に基づくリスクの転嫁や世代間公正などの環境的公正規範を軸に解明していくことである。 研究方法としては、産業公害被害などに比べ一般に顕在性、可視性が低く、社会問題化や政策課題化に科学的専門的世論喚起や社会的公正規範に依拠した問題構築過程が不可欠となることから、社会構築主義やリスク認知論等の文献研究、日本、アジア、太平洋地域を中心とした環境問題の問題化に関する年表作成、環境リスク認知に関する一般市民を対象とした統計的意識調査の質問紙作成をめざした資料収集と仮説構築、質問紙設計の検討を、毎月1-2回程度の研究会を開催して蓄積していった。その結果、環境リスク論に関する分析視座の確立、年表的手法による環境問題、環境運動、環境政策の複眼的把握、意識調査の仮説群の蓄積などにおいて、着実に研究成果をあげつつある。 とりわけ、この研究開始年度の直前、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発事故により、図らずも環境リスクをめぐる議論は、以前に増して世論やマスメディアの注目を集める論点になった。とりわけ原発のリスクや放射能汚染の問題は、当初から、有害化学物質、遺伝子組換え作物などとともに環境リスク群の1つであったが、それをめぐるリスク・リテラシーやその社会的公正性に関する論点や公論形成過程は、研究計画策定時以上に焦点化する意義がある研究課題と認識しつつ、次年度の意識調査の設計を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定期的な研究会の開催を順調に重ねることにより、既往の文献や研究成果に関する情報、認識の共有、意見交換が相当進み、年表作成、意識調査設計において、成果の蓄積や準備が着実に進展しつつある。震災・原発事故をどうこの研究に内部化させていくかで、検討を要したが、全体として遅延は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、現在順調に進行しており、当初の研究計画からの大幅な変更はない。しかしながら、震災・原発事故に伴う一般市民の環境リスク意識やリスク・リテラシーの深化、ライフ・スタイルや生活に関する価値体系の変容などは社会全体にも大きな影響を及ぼすほど無視できない意識変容であり、本研究の趣旨からして、この大きな意識変容や価値変容をできうる限り分析枠組みに組み込み、その記録と分析を後世にも残せるよう、意識調査の設計や年表作成に特段の意を注いでいきたい。
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Research Products
(8 results)