2013 Fiscal Year Annual Research Report
児童福祉施設所蔵資料の分析による第一次少年教護法制下における教護事業の実証的研究
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23330176
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
二井 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 教授 (10340043)
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | 感化院 / 少年教護院 / 早崎春香 / 菊池俊諦 / 子どもの権利 / 保護教育 / 少年教護 / 感化教育 |
Research Abstract |
本研究は、感化教育史・少年教護教育史を通観するために、1)コロニーシステム、2)子どもの権利論、3)科学的な児童鑑別と処遇という3点に注目すると、感化院長・少年教護院長の思想と感化教育・少年教護教育実践の系譜を捉え得るのでないかという仮説的な枠組みを提示し、感化院・少年教護院長会議の分析と、感化院・少年教護院関係資料を継承する児童自立支援施設をはじめとする施設所蔵文書の所在調査を進めてきた。 本年度は、第一に、科学的な児童鑑別と処遇に関わる精神医学的保護教育論の系譜の原点たる早崎春香の系譜に係る土山学園の歴史に関わって、感化院の入所規定と入所児童の実態に関する検討を行い、保護教育に関する具体的状況について日本特殊教育学会において研究報告を行った。また、早崎春香の薫陶を受け土山学園教諭となった奈古屋登槌の感化教育について、土山学園及び鹿児島県立牧ノ原学校での様態を解明し研究論文を発表した。さらに、早崎関係資料について、早崎が典獄を務めた川越幼年監(現川越少年刑務所)と早崎の系譜に係る群馬県立ぐんま学園において資料所在調査を実施したが、関係一次資料が残されていないことが判明したため資料保存に関する覚書を作成した。 第二に、感化院長会議及び少年教護院長会議、児童自立支援施設所蔵の感化院・少年教護院要覧類の検討を通して、感化院・少年教護院の通史的理解の枠組みを示す基礎作業として、感化院・少年教護院の関係年譜及び略史を執筆した。 第三に、子どもの権利論に関わる国立武蔵野学院の系譜の原点たる武蔵野学院初代院長菊池俊諦関係資料の調査を実施し、矯正図書館菊池文庫資料所蔵の少年教護法制定及び施行に関わる文書を渉猟し、影印本資料集『矯正図書館菊池文庫所蔵資料』を作成した。 第四に、コロニーシステムの系譜に係る家庭学校の「家庭制度」について整理すると共に、北海道家庭学校での資料調査依頼を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、感化院長会議及び少年教護院長会議、児童自立支援施設所蔵の感化院・少年教護院要覧類の検討を通して関係年譜及び略史を執筆することにより、感化教育・少年教護教育の通史的理解のための課題を整理することができた。 第二に、矯正図書館所蔵の菊池俊諦関係資料を調査紙、少年教護法制定及び施行に関わる文書を渉猟し影印本資料集『矯正図書館菊池文庫所蔵資料』を作成することで、子どもの権利論の系譜に係る感化教育・少年教護教育の思想と実践に関する基礎資料を入手すると共に、当該資料集には、コロニーシステムや精神医学的保護教育論の系譜に係る施設の実践に関する情報も含まれており、本研究における仮説的枠組みを検討するためには、当初の予定以上に有益な資料群であることを確認した。 第三に、早崎春香の系譜に係る土山学園における感化院入所判断について実証的に分析し、その成果を学会で報告すると共に、同系譜の牧ノ原学校における感化教育の様態を論文として発表することができた。なお、川越少年刑務所及び群馬県立ぐんま学園においては、残念ながら資料の散逸あるいは滅却のため関係資料が当該施設には存在しないことが確認されたため、施設所蔵資料の保存のための働きかけとして、資料保存方法を伝えた点では一定の意味があるが、当初計画の資料の入手には他に調査を要することが判明した。 第四に、北海道家庭学校は2014年が創立100周年ということがあり、その準備に向け当該施設所蔵資料の閲覧が制限されていたため、2013年度は資料調査を実施することができなかったが、次年度における資料閲覧を依頼し了解を得た。 以上、2013年度は資料的制約を確認しつつも、可能な限りの資料を収集、分析し、かつ今後の研究に向けてのの条件整備を進めることができた点で、研究がおおぬめ順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
最初にこれまでに収集しまた翻刻作業を進めてきた「感化院長・少年教護院長会議議事録集」を作成し、感化院長会議、少年教護院長会議における院長の発言について、コロニーシステム、子どもの権利論、精神医学的保護教育論に注目しながら分析を行う。 第二に、北海道家庭学校において、コロニーシステムの系譜に係る感化院・少年教護院関係資料を渉猟するため、同校所蔵の留岡幸助校長時代の受信書簡3000通を初めとする資料目録作成を進め、少年教護法関係資料の渉猟を行い、影印本資料集「北海道家庭学校所蔵家庭学校宛感化院長発信書簡等資料集」を作成する。これらの資料と感化院長・少年教護院長会議議事録の分析を手がかりにコロニーシステムの系譜を描出しその系譜にある感化院・少年教護院の様態を検討する。 第三に、子どもの権利論の系譜に係る国立武蔵野学院所蔵資料の調査と、武蔵野学院に勤務し、長崎県立感化院に勤務した森鏡寿の関係資料調査を長崎県立開成学園において実施する。これらの資料や矯正図書館において収集した菊池俊諦関係資料、感化院長/少年教護院長会議録の分析により、子どもの権利論の系譜を描出し、その系譜に係る感化院・少年教護院の教育の様態を解明する。 第四に、『農工学校三十年史』、三保学院関係資料及び感化院・少年教護院長会議録等の分析により、精神医学的保護教育論に係ると考えられる感化院・少年教護院の系譜を描出し、その系譜に係る感化院・少年教護院の教育の様態を解明する。 上記の課題を進捗させるために、5月、7月、8月、12月に感化教育史研究会を開催し、各人の担当する感化院・少年教護院史の系譜における教育像に関する発表を行い、相互に関係を検討すると共に、その研究成果を日本特殊教育学会をはじめとする学会において研究成果を発表する。最後に『少年教護時報』をはじめとする重要資料の翻刻を含む研究報告書を作成する。
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Research Products
(6 results)