2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会的場面における自己制御-目標葛藤、資源枯渇、そしてリバウンドを越えて
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23330193
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
村田 光二 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (40190912)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己制御 / 感情制御 / 解釈レベル / 遡及的悲観主義 / 子育て目標 / 自己高揚 / 感情予測 / 制御焦点 |
Research Abstract |
平成24年度にはネガティブ感情の制御に関する4つの研究を中心に、6つの実験研究を実施した。まず、抽象的マインドセットはネガティブ経験の理解を進めるので、具体的マインドセットによる経験の解釈の場合よりもコントロール可能性の低い出来事の必然性が高く知覚される(遡及的悲観主義が高まる)ことが示された。抽象的条件では必然性得点とネガティブ感情の負の相関も得られ、遡及的悲観主義がネガティブ感情の制御に役立つ可能性が認められた。次に、解釈レベルが遡及的悲観主義に及ぼす影響はコントロール可能性の低いネガティブ経験に限定され、ポジティブあるいはコントロール可能性の高い経験では生じないことを実証した。3つ目として、進化心理学的な視点から、幼児の汚物に対する嫌悪感を制御するために、病気回避目標と比較して子育て目標の活性化が役立つとの仮説を立て、それを実証する最初の実験結果を得た。さらに4つ目として、他者をステレオタイプ化してしまった者が、そうでない者と比べて自己高揚傾向を示すという暗黙の自己制御を行う可能性を示した。それ以外に5つ目として、平成23年度に実施した感情予測と達成動機づけに関わる実験データに制御焦点の個人差データを加えて、ポジティブ感情予測は促進焦点の者で、ネガティブ感情予測は予防焦点の者で効果が生じやすいという仮説を検討したが、支持する証拠を得られなかった。この現場実験については、方法を改善して再度実験を行い、現在データを分析中である。6つ目として、目標追求に役立つパートナーが自他の制御焦点の組み合わせによって決まる可能性を検討した。その結果、促進焦点を持つ場合、理想目標を追求する場面では同じ促進焦点の相手が役立つと評価されるが、義務目標の達成を目指す場面ではむしろ予防焦点の相手の方が役立つと評価される傾向が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていた3つの研究のうち1つが実施できず、他の1つは予測した結果を得られなかったが、新たに3つの領域で実験を開始して成果を得ることができたことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ネガティブ感情の制御の問題について多角的に研究を実施する。具体的には、遡及的悲観主義による制御、子育て目標の活性化による制御、ステレオタイプ化経験後の自己高揚的な制御の3通りである。また、対人関係における目標追求の問題には継続して、ステレオタイプ抑制後のリバウンド効果の自己制御の問題には新規に、取り組む予定である。
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Research Products
(7 results)