2011 Fiscal Year Annual Research Report
集団の心理的創発特性の可視化による的確なチーム・マネジメント方略に関する研究
Project/Area Number |
23330197
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 裕幸 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50243449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐沢 穣 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90261031)
中村 知靖 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (30251614)
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Keywords | emergent property / visualization / team management / shared cognition / team mental model / transactive memory / team resilience / teamwork |
Research Abstract |
本研究の目的は、集団の心理的創発特性を可視化する測定技法を開発し、それを活かした的確なチーム・マネジメント方略を検討して、効率的なチーム育成プログラムを構築することであった。計画初年となる本年度は、第一に、本研究の取り組む課題に関連のある先行研究の知見をレビューし、独自性のある研究課題へと精緻化を行った。第二に、計画していた実証的活動をスタートさせて、基礎的な知見の蓄積を行った。具体的には、(1)大規模病院の看護師を対象にしたチームレベルおよび個人レベルのレジリエンス測定、(2)テレビ放送番組制作チームを対象にした分有型記憶システムの形成プロセスの研究、(3)鉄道運輸企業を対象にした安全文化の基盤づくりに関する研究の3つをスタートさせた。これらの研究では、現場に入り込んで行動観察を行った。これらの行動観察は、最新の観察工学に基づいてシステマティックに実践し、集団の創発性をより的確に可視化するための基盤づくりに取り組んだ。さらに、組織メンバー間のコミュニケーション行動については最先端の測定技術を取り入れた測定を実施した。また、質問紙法に基づく調査もあわせて実施して、メンバーが主観的に認知している特性と、客観的に測定される集団の特性とがどのような関係にあるか検討を進めている。これらの研究を通して、組織の文化や風土、あるいはチームワークといった、メンバーが主観的に認知している集団全体の心理学的特性を目に見える形にする測定技法の開発に向けた取り組みも着実に進めた。さらに本年度の終盤には、企業組織を対象にした高パフォーマンス・チームを育成するマネジメントに関する研究もスタートさせた。初年度は現場研究を中心に行ったが、ここでえられる知見の普遍性を検討する必要もあり、そのための理論研究の準備をあわせて進めている状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたとおりに先行研究レビューを行って取り組む課題の精緻化を行い、現場に入り込んで複数の実証研究をスタートさせ、着実に研究知見を積み重ねている。来年度以降につながる研究プロジェクトも進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに現場をフィールドとする4つの実証研究を進めており、引き続き、これらを推進するとともに、集団の創発特性の効率的な可視化方略を次年度は明確にしたい。組織の現場に入り込んだ実証研究は、現実的な知見を得る上で極めて意義が大きいが、多様な組織においても、それらの知見が同様に見られるのか、一般性を検証するには理論的な検討も重要になる。そうした取り組みに歩を進めるために、集団の創発特性、全体的な心理学的特性の測定技法の開発を進め、高いチーム力をもった組織を育成するマネジメントのあり方を検討する取り組みに進めていく予定である。
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