2011 Fiscal Year Annual Research Report
法廷における感情的情報の提示が裁判員の判断に与える影響
Project/Area Number |
23330198
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊東 裕司 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (70151545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
厳島 行雄 日本大学, 文理学部, 教授 (20147698)
仲 真紀子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (00172255)
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Keywords | 裁判員 / 感情 / バイアス / 被害者の意見陳述 / 事実認定判断 |
Research Abstract |
本研究では、感情を喚起させるような情報の法廷における提示が、裁判員の有罪・無罪の判断にどのような影響を与えるのかについて、模擬裁判員実験を通して検討することを主たる目的とする。本年度については、殺人事件の被害者遺族の意見陳述がもたらすネガティブ感情の影響について、裁判シナリオの提示から判断までの間に遅延を置かない条件でいくつかの実験を行い、検討した。まず、実験参加者に事前に事件とは無関連な課題を課すことによって、直感的な情報処理を促す条件、合理的な判断を促す条件を設定し、後者の条件で感情の影響はやわらげられ、有罪判断率が低くなることを示した。また、刑事裁判の原則説明がネガティブ感情の影響を低下させることを示したが、この効果は実験参加者の認知欲求の程度により異なり、認知欲求の低い参加者の有罪判断率が原則説明により低下することが示された。さらに、正確な判断をしようという動機づけが、ネガティブ感情の影響を緩和することが示された。また、実験参加者の特性としての怒りの傾向とネガティブな反芻傾向の高低と、意見陳述によるネガティブ感情の喚起が有罪無罪判断に及ぼす影響との関係を調べる実験を行ったが、この結果は現在分析中である。 実験の他に、裁判員制度に関心を持つ一般市民に対する質問紙調査を行い、裁判員の判断にバイアスを与える要因にどのようなものがあると思われるかについて尋ねたところ、マスメディアによる報道と並び、感情がバイアスを与えると考えるものが多いことが示唆された。 模擬裁判員実験の結果を踏まえての、法実践に対する含意を導き出すことも本研究の目的の一つであったが、こちらについては現在、実験の分析と並行して進行中であるが、成果として出すまでに若干の時間がかかると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模擬裁判員実験は順調に進み、計画以上の成果を得ているが、法実務への提言、それに対するフィードバックからの問題の発掘というサイクルを完遂するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
法実務への提言の作成、それに対するフィードバックの収集に重点を置いて、模擬裁判員実験と並行して研究を続けたい。基本的にはバランス的に当初の計画に対し遅れている部分により重点を置くことになる。そのために、24年度は裁判官・弁護士・法律学者との意見交換の機会を積極的に設けたい。具体的にはシンポジウムの企画、法実務化に対するヒアリングの実施などを予定している。
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Research Products
(3 results)