2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合低周波音による振動感覚の知覚特性に関する基礎的研究
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23330220
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
高橋 幸雄 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 人間工学・リスク管理研究グループ, 主任研究員 (40312300)
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Keywords | 低周波音 / 複合音 / 振動 / 知覚 / 振動感覚 |
Research Abstract |
低周波音(周波数が概ね100Hz以下の音)による振動感覚の知覚特性の解明は、低周波音による不快感等の心理的影響を適切に評価するために必要、かつ重要である。特に、作業環境等で発生するような音圧レベルの高い低周波音に対しては、振動感覚がより強く知覚されるために、その重要度が高くなる。純音(単一周波数成分の音)を用いた研究は過去にあるため、本研究では、低周波域の複合音(複数の周波数成分を有する音)によって知覚される振動感覚の特性を実験的に調べてその知覚特性の解明に寄与するとともに、低周波音の影響評価に向けた基礎データとすることを目的としている。 研究代表者の過去の研究から、低周波音による振動感覚は頭部で鋭敏に知覚されることが分かっているため、平成23年度(初年度)の実験では、2個の周波数成分で構成された12種類の複合低周波音を刺激音として、「頭部の振動感覚」の知覚閾値、及び比較用の聴覚閾値を測定した。複合低周波音の構成は、40Hzまたは50Hzをキー成分とし、それに付加成分(互いに高調波の関係にならないよう、40Hzのキー成分の場合には、16Hz、25Hz、または63Hz。50Hzキー成分の場合には、20Hz、31.5Hz、または80Hz)を組み合わせた。また、各組み合わせにつき、2成分のレベル差は2種類とした。実験の結果、聴覚閾値の場合には、より周波数の高い成分の音圧レベルが、ほぼ支配的に閾値に寄与していたが、「頭部の振動感覚」閾値の場合には、2個の成分がともに寄与していることを示す結果が得られ、聴覚の場合とは知覚特性が異なることが示唆された。また、2個の成分の周波数の差による影響については、現時点では不明確である(平成24年8月、Inter-Noise 2012で一部のデータを発表予定)。 この実験は平成24年度前半も継続し、データを蓄積する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始年度(平成23年度)の3月に発生した東日本大震災の影響で、研究代表者の所属機関でも計画段階では想定していなかった夏季節電を強いられ、夏季の研究が大幅に滞った。そのため、予定していた被験者実験の進行・実験データの蓄積が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、平成23年度に実施した実験を継続実施する。平成24年度後半から、「頭部の振動感覚」の等感度レベルの測定実験を開始し、振動感覚の知覚特性をより詳しく調べる予定である。現状で実験設備等に大きな問題は無いため、現在の体制(研究代表者による単独実施)での研究遂行が可能と考えている。
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