2012 Fiscal Year Annual Research Report
中等社会系教科における歴史総合・地歴相関カリキュラムに関する国際調査・開発研究
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23330258
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
原田 智仁 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (90228651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 武志 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20273302)
二井 正浩 国立教育政策研究所, その他部局等, 研究員 (20353378)
中本 和彦 四天王寺大学, 教育学部, 准教授 (80513837)
田中 伸 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (70508465)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 歴史総合カリキュラム / 地歴相関カリキュラム / ビッグ・ヒストリー / グローバル・ヒストリー / 国際情報交換 |
Research Abstract |
24年度には23年度に引き続いて、それぞれの研究者独自の研究関心を踏まえつつ、協力して海外調査(米国のカリフォルニア州とメリーランド州、英国、インドネシア、韓国)を行い、地歴相関カリキュラムや歴史総合カリキュラムに関連する資料・データ等を収集するとともに、教師や研究者へのインタビューを実施した。その結果、地歴相関カリキュラムとしては、①自国史と世界史という枠組みを超える人類史的視野に立つビッグ・ヒストリーと、②地理的・文化的な観点から諸地域世界の歴史にアプローチするワールド・カルチャーズの原理が、また歴史総合カリキュラムとしては、③生徒同士の議論を通じた史料の批判的読解を重視する"Reading Like A Historian Approach"と、②体系的な通史を否定して多元的で文化横断的な歴史認識を重視する"Global History Approach"の原理が、それぞれ示唆的であることが判明した。 これらを基にして、研究分担者の役割ごとに地歴相関と歴史総合の原理の一般化を図るとともに、原理に基づくカリキュラム・モデルの構築と検証に着手した。25年度はこれをさらに進める必要がある。併せて、本研究の過程で現地調査のコーディネーターを依頼したインドネシア、韓国、米国の研究者らとの国際的な研究ネットワーク作りに向けて足場を固めることができた。具体的には、24年12月にインドネシアのスラバヤ大学で開催されたインドネシア社会科教育学会に韓国の研究者とともに参加して交流を深め、国際的な研究組織の立ち上げと25年度中の研究交流大会の開催に向けて共通理解を得るに至った。25年度はこれを実現して軌道に乗せていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調と評価した理由は大きく以下の3点である。第1に、それぞれ多忙な研究者5人の連携がうまく行き、海外調査も米英両国を中心にほぼ予定通りにできていることである。第2に、その結果として、地歴相関カリキュラムに関する事例と歴史総合カリキュラムに関する事例が、それぞれ二つずつ収集できたことである。第3に、海外の現地協力者との人的ネットワークも順調にできあがり、今後の研究の進展に見通しがついたことである。 課題としては以下の2点がある。第1に、インドネシアや韓国からは、当初想定したほどの歴史総合カリキュラムや地歴相関カリキュラムの事例が得られないことである。第2に、収集した事例からの原理の抽出にかなり手間取り、まだカリキュラム・モデルの構築と検証に十分な目処がたっていないことである。これが「おおむね(順調)」との評価にとどまった理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の前半には、収集したカリキュラムや教材資料の分析と地歴相関、および歴史総合原理の抽出を踏まえ、それぞれの研究者の分担ごとにカリキュラム・モデルを構築し、必要に応じて高等学校現場の教師の協力を得つつ、その妥当性を検証していきたい。 本年度の後半には、研究の成果をできれば国際シンポジウム、あるいは学会等の課題研究の場を通じて社会に発信し、広く批判を得ることで、カリキュラム・モデルの修正・改善につなげたい。また、学会誌や大学の研究紀要等にも積極的に投稿する予定である。 さらに、国際シンポジウムないし学会等の場を通じて、まずは日本、韓国、インドネシアのアジア3カ国の社会科教育研究者の研究交流組織を確立したい。その中核に、本研究の国内研究分担者と現地コーディネーターを位置づける予定である。 地歴相関・歴史総合のカリキュラム開発に関して、アジア諸国は米英に大きく後れを取っている。21世紀の知識基盤社会のコンピテンシーを地理歴史教育において育てる上で、これらのカリキュラムの果たす役割が大きいことを考えると、アジア諸国の国際的な研究協力体制の基で新たなカリキュラムの可能性と限界について議論することの意義は大きい。そのための第一歩を踏み出すことが、来年度以降をも見通した本年度の研究の推進方策である。
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Research Products
(18 results)