2011 Fiscal Year Annual Research Report
読書力の高い聴覚障害児はどのようにテクストを認知し理解しているのか
Project/Area Number |
23330273
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 人間系, 准教授 (80265529)
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Keywords | 特別支援教育 / 聴覚障害学 / 読書力 / テクスト理解 / 眼球運動 |
Research Abstract |
平成23年度は、読書力の高い聴覚障害児が、物語文、説明文、詩文といったテクストを読んで理解する際に、どのような読みの方略を採用するのか、また、テクストジャンルの変化に合わせて、どのように読み方略を変換していくのかについて、読書力の低い聴覚障害児との比較を通して、その特徴を明らかにするとともに、年齢又は学年の上昇に伴う読み方略の発達的変化について検討を行うことを目的とした。 研究の実施により、特別支援学校(聴覚障害)の小学部中学年(3・4年)の20名、小学部高学年(5・6年)の23名、中学部(1・2・3年)の45名の計88名の、テクスト読み時の眼球運動のデータを収集することが出来た。なお、対象児のデータは、読書力検査の結果に基づき、88名を読書力高群(読書段階3段階以上)と読書力低群(読書段階1・2段階)に分け、両群の比較を通して、読書力高群の読みの方略の分析が行われた。 分析の結果、読書力の高い聴覚障害児のテクスト読みは、読書力の低い聴覚障害児のテクスト読みに比べて、注視点が多い、注視時間が長い、読みのスパンが短い、回帰運動が多い、従って、読みの時間が長いことが確認された。再生率から見た理解度は読書力高群が高かった。また、テクストジャンル別読みにおいては、読書力高群は、読書力低群に比べて、物語文<説明文<詩文の順に時間がかかること、注視点は説明文>詩文>物語文の順に多く、読みのスパンは、物語文>説明文>詩文の順に短くなること、回帰運動は詩文>説明文>物語文の順に多いこと示された。読書力低群では、全般的に、学年の上昇に伴う変化やテクストジャンに応じた方略の変換がほとんどみられなかった。 このことから、読書力高群は、注視を多用する短い読みのスパンを用いてテクスト理解を進めていること、また、テクストのジャンルに応じた読みの方略の変換を行っていることが明らかになった。 このような研究成果の一部が平成23年9月に開催された特殊教育学会49回大会において報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られたデータの分析が完全に出来ていない点はあるものの、当初計画していた対象児の確保ができ、分析が行われていること、また、研究の成果が明確に示されつつあることから、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、当初の研究計画に示してあるように、テクスト難易度を変数とし、読書力の高い聴覚障害児の読みの方略の検討を行う予定である。平成24年度における研究計画の変更等はとくにない。
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