2012 Fiscal Year Annual Research Report
読書力の高い聴覚障害児はどのようにテクストを認知し理解しているのか
Project/Area Number |
23330273
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 人間系, 准教授 (80265529)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 聴覚障害児 / 物語文理解 / 挿絵の活用 / 眼球運動 / 読書力 / 特別支援教育 |
Research Abstract |
平成24年度は、聴覚障害生徒が挿絵入り物語を読む際に、挿絵をどのように活用しているかを調べるために、読書力の高い群と低い群に挿絵の具体性の異なる2種類の物語文を読ませ、物語を理解する際の読書力高群と低群における挿絵の活用方略を検討した。 特別支援学校(聴覚障害)の中学部に在籍する聴覚障害生徒 20 名の対象生徒は、読書力評価段階に基づき、読書力高群と読書力低群の2群に分けられた。読書材料は、小学校6年生用国語教科書から挿絵入り物語文2題を選定し、各題は3分以内で読める分量とした。物語文理解の尺度は、黙読後の自由再生による再生率を用いた。また、挿絵の活用の様子をリアルタイムでとらえるために、黙読時の眼球運動を測定した。 分析の結果、読書力高群は、挿絵の具体性に関わらず、全体的に高い理解度を示すこと、読書力高群と読書力低群の両群ともに、挿絵を長くそして多く見るという挿絵活用の特徴を示していること、また、いずれの群においても、具体性の高い挿絵を見る時間が長い人ほど、理解度も高い傾向にあるといった挿絵活用の特徴が確認された。なお、読書力低群では、挿絵を長く参照する人は物語の理解度が高いといった挿絵活用の方略が示される一方、読書力高群では、読書力低群と同様に挿絵を長く参照しながらも、挿絵から直接理解を導かず、文章をじっくりと読むと同時に挿絵も参照しながら、物語の理解に至るといった方略が示された。読書力低群も、文章から物語の理解が導かれる可能性を排除できないものの、挿絵に多く依存した理解を進めていることが示された。総じて、読書力高群も読書力低群も、物語文における挿絵を積極的に活用していることが明らかになった。とくに、読書力低群は、挿絵を積極的に活用し物語の理解を行い、読書力高群は、具体性の高い挿絵は活用するものの、主に文章じっくり読んで理解を促す方略が採られていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、対象者の確保の問題、とくに読書力の高い聴覚障害児の確保が困難な問題もあり、物語文理解における学年の上昇にともなう発達的変化については正確な検討はできなかった、しかしながら、当初設定した読書力の高い聴覚障害生徒における挿絵活用の方略が明らかにできたので、一定の研究成果は得られたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、読書力の高い聴覚障害児のテクスト認知と理解の方略を明らかにするために、5か年の計画で実施されており、昨年度は、物語文、説明文、詩文といったテクスト理解時の特徴を、今年度は、物語文理解時の挿絵の活用の特徴を調べることができた。 3年目にあたる今年度は、読書力の高い聴覚障害児における横書きと縦書きといったテクスト体制の変化による読みの特徴に検討する予定である。平成25年度以降も、当初の計画通り、実施できる見込みである。
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