2014 Fiscal Year Annual Research Report
読書力の高い聴覚障害児はどのようにテクストを認知し理解しているのか
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23330273
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 人間系, 教授 (80265529)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 聴覚障害児 / テクスト難易度 / 理解度 / 読みの方略 / 読書力高群 / 読書力低群 / 眼球運動 / 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26度の研究では、テクスト難易度の違いにみられる聴覚障害児のテクスト読みの方略の変化と発達を調べるために、聴覚障害児童生徒における読書力高群と低群に、難易度が異なる2種類のテクストを読ませ、難易度、学年、読書力といった変数により、理解度や読みの方略の変化や相違を検討した。 対象児童生徒は、特別支援学校(聴覚障害)小学部4年生・6年生・中学部2年生、高等部2年生の計18名であった。これらの児童生徒には、読書力(5段階)評定により、読書力高群(読書力3段階以上)と読書力低群(読書力2段階以下)に分けられ、小学校4年生の教科書から精選した低難易度文(順序配列物語文)と高難易度文(ランダム配列物語文)の2題の物語文を黙読させ、黙読時の眼球運動と黙読修了後の内容に関する即時自由再生を行った。 分析の結果、読書力高群は、読書力低群に比べて、難易度の違いにかかわらず、全体的に理解度が高いこと、また、読書力低群ではすべての学年において難易度による理解度の差が示されるものの、読書力高群は、難易度による理解度の差はほとんど示されないことが明らかになった。眼球運動の分析からは、読書力高群は、難易度が上がるについて、読みのスパンが短く、注視点が増え、回帰運動が多く傾向から、読む時間が長くなるが、読書力低群では、そのような変化がほとんど見られないことが示された。 このことから、読書力高群は、今回設定したテクストの難易度による理解度の変化はほとんど見られないこと、しかし、読書力低群は、難易度が上がるにつれ、学年に関係なく、理解度が低くなることが示された。眼球運動のデータからも、読書力高群は、テクストを理解するために、積極的な理解の探索を試みているが、読書力低群では、難易度の変化による積極的な認知的変化が伴わないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成23年度にテクスト種類、平成24年度にはテクスト関連視覚材料、平成25年度にはテクスト体制、平成26年度にはテクストの難易度に関する研究を行っており、毎年関連学会等で研究成果を公表している。平成27年度には、読書力の差を規定する読み手要因(個人要因・教育的要因・社会的要因)と、研究全体の総括を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、読書力の高い聴覚障害児童生徒がテクストをうまく理解することができる要因を探り、読書力の低い聴覚障害児童生徒のテクスト理解の指導に繋がる示唆を得ることを意図した研究である。そのために、テクストの種類(物語文・説明文・詩文)、テクスト関連視覚材料(挿絵)の活用、テクスト体制(横書き文章と縦書き文章)、テクスト難易度(順序配置物語文とランダム配置物語文といったテクスト要因と、読書力に影響を及ぼす読み手要因(個人要因・教育的要因・社会的要因)の側面から、読書力の高い聴覚障害児童生徒のテクスト認知方略を明らかにする研究である。 これまで、平成23年度にテクスト種類、平成24年度にはテクスト関連視覚材料、平成25年度にはテクスト体制、平成26年度にはテクストの難易度に関する研究を行っており、平成27年度には、読書力の差を規定する読み手要因と、研究全体の総括を予定している。平成27年度においても、筑波大学人間系倫理規定に基づきながら、対象児童生徒の在籍学校には、事前に調査実施の要請を行っており、当初の計画通り、順調に実施される見込みである。
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Research Products
(4 results)