Research Abstract |
本研究は,構造(流束,正値性)保存型の数値解法として理工学各分野で広く応用されている有限体積法に対する数学的な基盤理論を構築し確立することを目標としている.特に,差分法や有限要素法(特に不連続Galerkin法)と有限体積法の相互関係を研究するという方向からの研究を強調すると言う点で,個性的である.平成23年度の研究参加者の,個別の研究成果は,次の通り.代表者・齊藤は,特に,退化放物型問題の有限体積近似を研究し,非線型半群理論に基づいて,$L^1$空間での収束定理を証明した.また,(鋭角性を仮定しない)任意形状の三角形分割上で最大値原理を実現する有限体積要素近似について,ある種の離散コンパクト性に基づいた収束解析を行った.分担者・谷口は,ハミルトン力学的アプローチについて研究を行った.まず,離散微分形式の理論と組み合わせることで一般のメッシュへの拡張を行い,また,離散微分形式の理論における幾何学的不等式とエネルギー保存則を組み合わせた安定性解析も行った.さらに,Ostrovsky方程式と呼ばれる方程式について,この方程式のマルチシンプレクティック構造と,それを利用した数値解法についての研究を行った.分担者・村川は,以前から研究している退化放物型PDE系に対する線形スキームについて,有限体積法による全離散近似を考え,収束性を証明した.分担者・土屋は,Riemann多様体上の有限要素解析を行う一方で,外接円条件の下での,二次元三角形有限要素法の補間誤差評価の別証明に成功した.分担者・降籏は,非線形現象を記述する偏微分方程式に対して,構造保存解法の一種である離散変分法を適用して非線形性を弱めつつ緩和構造保存性を保った数値スキームを構成する手法について研究を行った. 平成23年度は,初年度であったので,夏(8月,富山)と冬(3月,福岡)に,研究打ち合わせを目的としたワーショップを二度開き,各研究参加者の研究の現状や問題意識についての情報共有を行った.そこで,今度の研究方法等についての,かなり具体的な話し合いを行うことができた.
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