2013 Fiscal Year Annual Research Report
非線形偏微分方程式の背後にある確率論的構造と確率論的な摂動による解構造の変化
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23340030
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
名和 範人 明治大学, 理工学部, 教授 (90218066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福泉 麗佳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00374182)
坂上 貴之 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10303603)
松本 剛 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20346076)
吉田 伸生 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (40240303)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 確率微分方程式 / 非線形シュレーディンガー方程式 / オイラー方程式 / 超流動 / 非線形光学 / 乱流 / 爆発解 |
Research Abstract |
本研究は,非線形光学や超流動と関係する (A) 非線形シュレーディンガー方程式などを解析するグループと (B) 古典乱流を解析するグループに分かれている. グループ (A) では,非線形光学におけるカー効果のモデルとなる方程式を含むような場合の爆発解の爆発速度の評価に,解の背後にあるネルソン拡散過程を用いる方法の厳密化を行い,発見的な議論から数学的な議論へと移ることができた.また,超流動やボース=アインシュタイン凝縮のモデルを含むような方程式の場合は,基底波解の近傍の解の振る舞いの分類定理の証明をまとめているところである.確率論的摂動を伴う場合は,ゲーム論的確率論を手本とした手法や視点を導入した研究を始めた. グループ (B) では,乱流の新しい数学的な理論の建設を目指して,(B1) マクロな視点と(B2) ミクロな視点からの両方からアプローチしている.(B2) で行っていた流体の方程式に確率論的なノイズを加えたモデルの解析は,乱流とは少し離れてランダム媒質中の高分子模型の局在現象の解明に結びついた.(B1) では,3次元乱流の統計力学的な記述に向けて議論を重ねた結果,形式的なモデルができつつある.乱流のサンプルはオイラー方程式の散逸的弱解であると予想されるが,厳密な数学とするためにはさらなる検証が必要であり議論を継続している(この内容は雑誌 Nonlinearity の招待論文として執筆中である).また,2次元乱流の場合の解析も進め,外力が確率論的な場合と決定論的な場合との違いを数値計算を用いた検証も行ったり,二次元自由減衰乱流における粘性ゼロ極限でのエンストロフィーの散逸について考察を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形光学のモデルとなる非線形シュレーディンガー方程式の場合,解の背後にあるネルソン拡散過程の中のブラウン運動が持つ性質が「マクロ」な爆発解の世界に爆発速度として現出していることが発見的な議論を越えて数学的な言説としてはっきりとしてきた.これにより非線形シュレーディンガー方程式の爆発解の解析については新しい段階に入ったと言えるかもしれない.このパートは日本数学会の雑誌「数学」への寄稿を招待され準備中である. 確率論的摂動項を持つ流体モデルの解析は異なるステージへと進んだ.このような摂動項は解を滑らかにする傾向を示し,オンサーガー言うような乱流の性質を満足しない.しかしながら,このモデルはランダム媒質内の高分子模型として興味深く,完全局在と呼ばれるきわめて強い局在現象が起こることを示すことができた. 3次元乱流の新しいモデルとして,乱流場の熱・統計力学的な定式化を目指してきたが,漠然とした中にも目鼻立ちが見えてきたように思える.今年度は研究者セミナーで話をさせて頂いた頂いただけでなく,大阪大学大学院基礎工学研究科で集中講義も行った. 2次元乱流は3次元乱流とは趣を全く異にするが,3次元ほど普遍的な構造が強固ではことが数値的に検証されている.
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Strategy for Future Research Activity |
非線形シュレーディンガー方程式の爆発解をネルソン拡散過程を用いて解析する手法の精密化および厳密化を目指す.また散乱理論への応用のための理論的な整備も進める.確率論的摂動項を持つ非線形シュレーディンガー方程式の解析は,視点を変えて,先験的な確率構造を仮定するのではなく,望まれる解の性質から摂動項の性質を規定するような,ゲーム論的確率論の手法を導入しようと試みている. 乱流場のサンプルが,De Lellis - Szekelyhidi Jr や Isset が存在を証明したオイラー 方程式の散逸的弱解の族であることの検証を行う.2次元乱流の「例」としてα点渦系におけるエンストロフィー散逸の挙動のカオス的な運動などを調べることにより,その関係を探って,より一般的なエンストロフィー特異散逸メカニズムの姿を明らかにすると同時に,カオス的運動が見せる様々な統計的性質との関連などを調べる.
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Research Products
(12 results)