2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340033
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
千原 浩之 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (70273068)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小櫃 邦夫 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (00325763)
宮嶋 公夫 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (40107850)
伊藤 稔 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (60381141)
筧 知之 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70231248)
小野寺 栄治 高知大学, 自然科学系, 准教授 (70532357)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 分散型写像流 / 初期値問題 / 適切性 / 擬微分作用素 / バーグマン型変換 / フーリエ積分作用素 / Berezin-Toeplitz 作用素 / 量子化 |
Research Abstract |
研究代表者の活動を中心に述べる。今年度の研究活動の主要な実績は、多様体間の分散型写像流の初期値問題の懸案の解決に目途がついたことと、ある種の複素数値相関数をもつ大域的フーリエ積分作用素を通じた擬微分作用素の解析とその超局所解析への応用に関して着手可能ないくつかの研究課題と今後の研究にとって重要と思われる指針となる着想が得られたことである。 最近、研究分担者である小野寺はケーラー多様体上の閉曲線運動を表す高階分散型写像流の方程式の初期値問題が解けるという画期的な成果を挙げた。解の一意性が証明されれば、分散型写像流の幾何解析において初期値問題の解法についてはほぼ最終結果になると思われる。研究代表者は1次元トーラス上のある種の高階線型分散型偏微分方程式系の初期値問題が適切となるための必要十分条件を与えた。これは小野寺の扱っている方程式系の構造を線型偏微分方程式論の立場で理解し、大雑把に偏微分方程式論の立場で見ると解けそうにない初期値問題がなぜ解けるのかを解明し、最後の関門である解の一意性の証明の指針を与える目的で行った研究であるが、その意味では目的が達成されたと思われる。 もう一つの研究である、ある種のフーリエ積分作用素を通じた擬微分作用素の解析では、調和振動子とバーグマン変換の相性の良さのような「相性がよい」ということを記述する概念がよくわからず、基礎理論構築や具体的な微分作用素系への応用での進展の障害になっていた。バーグマン変換の積分核が調和振動子の固有関数系の母関数になっていることに着目すると、相関数よりも積分核に着目することで特定の作用素系との相性をみることができることがわかったので、今後は様々なモデルに対して同様の方針で研究を進める。また、この方面に関連する研究集会などの情報収集の機会は限られているが、今年度に限ると貴重な機会には必ず出席し情報収集や討論を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小野寺の研究の懸案は画期的な成果をもたらすものであるが、研究代表者としては解決の目途がたったこと、および、昨年度の反省点「ある種のフーリエ積分作用素を通じた擬微分作用素の解析では膨大な時間を費やしながら進展がなかった」に対して新しい着想や着手可能ないくつかの研究課題が得られたことを考慮して「概ね順調」と判断する。また、研究代表者や研究分担者らのこれまでの成果のいくつかが比較的質の高い学術雑誌の査読付き原著論文として出版されたことも考慮した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、ある種のフーリエ積分作用素を通じた擬微分作用素の解析の研究を中心にすすめる。今年度は、この方面にいくつかの着手可能な課題を見つけたからである。具体例を1つだけ挙げると、抽象的ウィーナー空間では無限次元空間ながらもバーグマン変換や擬微分作用素が定義されることが最近の研究で欧米人研究者の研究により発見されたが、作用素の変換や量子化パラメータの変形等の基本的は課題は研究代表者には着手可能である。 小野寺の研究の懸案は画期的な成果なのでなるべく本人が一人で解決することが望ましい。しかし、研究代表者の線型理論を幾何解析に転用することは高度な技術を要するので、これからの1年間以内に解決しないようであれば、研究代表者も積極的に協力する。分散型写像流の幾何解析では今後の研究の中心になるのは初期値問題の解法ではなく、解の長時間挙動であり、そのための有力な手段が可積分系理論の幾何解析とも言うべき理論を構築することになると思われる。そのための準備として、関連すると思われる研究集会などの情報収集の機会にはなるべく出席する。 また、今年度は研究代表者の所属機関で行っている談話会講演の中に可積分系理論の幾何解析の構築に関連した重要な情報をもたらしてくれるものがあった。今後は、研究代表者の所属機関に本研究と関連のある研究者を招へいして情報交換や研究討論をおこなうことをもう少し積極的に行うことにする。具体的には、談話会講演者の招聘と、2014年1月中旬の「スペクトル散乱シンポジウム」(研究代表者・渡邊一雄氏・学習院大学など)の開催に協力する。
|
Research Products
(18 results)