2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙の大規模構造形成を探る超高分解能X線分光センサと極低温動作環境の開発
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23340043
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤本 龍一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (20280555)
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Keywords | X線天文学 / 精密X線分光 / 断熱消磁冷凍機 / X線カロリメータ |
Research Abstract |
本年度は研究実施計画に沿って3つの研究を行なった。それぞれについて順にまとめる。まず、これまでの知見を踏まえて自作断熱消磁冷凍機で使用する磁性体カプセルを再設計・製作した。その結果50mKまで冷却できるようになり、また80mK以下を15-20時間保持することに成功した。基本的な冷却性能については十分に要求を満たすものを実現できるようになったといえる。しかしながらリサイクル時間についてはあまり改善が見られず、またカプセルの密封が不十分で結晶が漏れるという不具合が発生した。前者について、平成23年度に行なった対策があまり効果がなかったことから、結晶内に這わせる金線の本数を増やして熱伝導度を改善することが重要であることがわかった。後者については、カプセルの継ぎ目を溶接することによって密封性をよくすることが必要であるという結論に至った。 次に、自作断熱消磁冷凍機のステージにTES型X線マイクロカロリメータとSQUIDを搭載してセンサとして動作させ、X線信号を検出することに成功した。5.9keVのX線に対するエネルギー分解能は90eVであった。これは半導体検出器を上回る性能であり、動作環境が整いつつあることを示している。ただ、目標性能よりはまだ1桁悪く、主要な原因として、使用したバイアス電源のノイズレベルが高かったこと、外部磁場の遮蔽がまだ不十分であることが示唆された。 第三に、ガスギャップ式熱スイッチの試作機の基本特性の評価を行なった。構造部材についてほぼ計算通りのオフ熱伝導度が実現できていることが確かめられたが、機械的な強度に問題があることもわかった。また、ゲッターと熱浴との間の熱伝導の最適化に必要なデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究実施計画に沿って進めることができている。センサの性能を改善するところまでは至らなかったが、対策方法を検討するところまでは実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って、磁性体カプセルの熱伝導度の改良と、自作断熱消磁冷凍機上でのセンサの性能改善を進める。なお、平成24年度からASTRO-H衛星に搭載されるX線マイクロカロリメータ検出器の試験がJAXAの試験施設等で実施されるので、それにも参加して情報を収集し、本研究におけるセンサの性能改善の参考にする。
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Research Products
(2 results)