2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙暗黒時代から現在に至る統一的銀河スペクトル進化モデルの構築
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23340046
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 努 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90436072)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 理論天文学 / 光赤外天文学 / 銀河形成進化 / 星形成 / 輻射輸送 |
Research Abstract |
宇宙の星形成史は宇宙開闢以来の重元素合成史の解明に本質的に重要である. 本研究ではこれまで星, ダスト放射のみを扱っていた銀河のスペクトル進化モデルを, 星間ガスの多相モデル及び力学を導入することで, 全体がガスの状態の原始銀河から大半が星に転化した現在の銀河まで, あらゆる銀河年齢に対応するモデルに拡張する. また本研究期間中に得られるHerschel等の観測データを用いてモデルを徹底検証・改良することで, 宇宙暗黒時代から現在まで適用可能な銀河のSEDモデルを構築し, 次世代観測への予言を行うことが目的である. 24年度は特にダスト粒子のサイズ進化モデルについて大きな進展があった. 銀河中の重元素の進化は化学進化によって記述されるが, 重元素の固体微粒子であるダストの進化に応用するには, 様々な星間物理を考慮する必要がある. 我々は星間物質の多相(高温ガス, 低温中性ガス, 分子ガス)の物理を取り入れ, それぞれの中で異なったダスト成長と破壊過程が進むことを正しく考慮したうえで、全銀河年齢100億年にわたって適用できる事故整合的な理論の構築に世界で初めて成功した. この成果は学術雑誌に掲載済みである。この理論を銀河の輻射モデルに適用するのが次の目標である. これについてはまず, 紫外線から可視光線でのダスト粒子による輻射の減光曲線の理論を構築した. この成果についても既に論文としてまとめており、間もなく投稿する. 上記の減光曲線の進化モデルを検証するため, 高赤方偏移銀河の減光曲線を求める観測的研究を開始し, 初期成果はH25年度の国際会議で発表が決定している, また長波長の究極の電波観測装置計画であるSKAへの応用のため, 銀河の星形成率, 全バリオン質量, 全質量の間に成り立つ新しい経験則を発見し, SKA関連の研究会にて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
化学進化に基づくダスト粒子のサイズ分布進化モデルの完成はもっと時間がかかると予想していたが、極めて順調に、かつ完成度の高い形で実現できた。この成果は論文査読者にも絶賛され、次世代の標準的モデルとなることは間違いない。これが完成したことで観測的にも理論的にも大きな応用の可能性が拓けたといえる。観測的な側面でも、高赤方偏移銀河のダスト減光曲線の直接決定という、これまでなされていなかった新しい方法による研究が進展している。またSKA関係の観測計画策定も本格化し、中心的役割を果たすことができている。以上より、研究計画以上の進展がみられたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度よりSKA Japanサイエンスワーキンググループの総括となったこともあり、中性水素を通じた力学的側面からの研究が当初よりも能率的に進めている。世界的な研究協力体制を作るに至った。予想通りであるが銀河のスケーリング則の検証を早めに進められている。H25年度はこの方面、および減光曲線の進化の研究に進展が見込まれる。 理論モデルの構築、観測とも順調に進んでおり、特に変更等は必要ない。
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Research Products
(31 results)