2011 Fiscal Year Annual Research Report
初代クェーサー探査による超巨大ブラックホールの形成と宇宙再電離の研究
Project/Area Number |
23340050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
柏川 伸成 国立天文台, 光赤外研究部, 准教授 (00290883)
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Keywords | 初期宇宙 / ブラックホール / 宇宙再電離 / 銀河形成 / 銀河共進化 |
Research Abstract |
本研究では、A)赤方偏移6.5を超える超遠方QSO の発見、B)赤方偏移6付近の遠方QSO の特に暗い種族を多数検出すること、の2大目的を達成するために、すばる望遠鏡の1)大集光力と2)広視野撮像機能、及び3)特殊なフィルターを用いる。この3つの有効な手段を組み合わせる手段を持っているのは現在われわれのグループだけである。われわれは、本研究のための予備観測として、実際にすばる望遠鏡の観測時間を獲得し、その実効性の検証を行ってきた。残念ながら平成23年、すばる望遠鏡にて不慮の事故があり、本研究の手法の有効性を確認する予備観測が実行されないまま終了してしまった。この研究進行の遅れをとりもどすため、平成23年度分科研費を繰り越した上、平成24年初頭に他の望遠鏡(ケック望遠鏡・VLT)を用いた観測を行った。このうちVLTの観測においては天候不順により予定されていた観測を行えないまま終了してしまったが、ケック望遠鏡における観測においては天候にも恵まれ1つの明らかな赤方偏移6の遠方QSOを発見することができた。このQSOはこれまで発見された同時代のQSOに比べて5等も暗いもので、成長過程の超巨大ブラックホールを内包している可能性がある。今後の観測次第では、超巨大ブラックホールの成長モデルに制限をつけることが期待される。また再電離のトポロジーに関わる重要な問題として最遠方にある原始銀河団を発見することができた。30個以上の赤方偏移6に位置するメンバー銀河候補を持つこの高密度領域において少なくとも8個の銀河について分光同定することに成功した。この銀河団はこれまで発見された銀河団の中で最遠方に存在するものである。この銀河団内の速度構造を調べたところ、非常に未発達の銀河団とも、既に十分発達した銀河団とも、両方の解釈の成り立つユニークなものであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年すばる望遠鏡にて不慮の事故があり、望遠鏡の一部の機能が数か月の間使用できない事態が発生した。このため平成23年に予定していた本研究の手法の有効性を確認する予備観測が実行されないまま終了してしまった。これに伴い、平成23年度分の本科研費の一部を平成24年度に繰り越し、ケック望遠鏡、VLTなど外国の望遠鏡を用いて、予備観測を実行した。その結果、赤方偏移6のQSOの発見、など一定の成果を挙げることはできたが、当初の研究計画に比べて数か月の遅れが生じている。今後の研究で遅れをとりもどしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの予備観測では目標の1/5の領域の撮像観測が完了しているので、この中から見つけた15個の超遠方QSO/遠方QSO候補の分光観測を行う。広視野撮像観測については最も効率のよいすばる望遠鏡を用いるが、分光観測については、上記に述べたように、すばる望遠鏡だけではなく、ケック望遠鏡/VLTなどの地上大型望遠鏡を使用する予定である。この予備観測にあたっては、まず超遠方QSO/遠方QSOの発見に集力したい。特に超遠方QSOについてはたった1個の発見であっても、最遠方に存在するSMBH の発見を意味するものであり、天文学全体に与えるインパクトは大きい。 また再電離のトポロジーに関わる重要な問題として最遠方にある原始銀河団を今年度発見することができた。この銀河団探査も今年度追観測が予定されており、並行して研究を進める上で、宇宙における環境と、再電離、そしてBHの出現、という相関について考察を進めたい。 また、本観測に向けて観測時間獲得のために多数の研究者と観測計画書の策定などを行う。
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