2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 順一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50212303)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重力波 / 宇宙論 / インフレーション / 位相的欠陥 / 原始ブラックホール / コズミックストリング / Bモード偏光 / 宇宙マイクロ波背景放射 |
Research Abstract |
本年度の具体的な研究成果としては、まず、本計画の根幹として行ってきた、スカラー場宇宙論における重力波放出の数値シミュレーションコードの開発が、研究協力者の多大な尽力を得てほぼ完成し、現在さまざまな条件の下で行った計算をまとめているところである。年度末近くに発表されたBICEP2の観測に対応することになったため、論文の完成には至らなかったものの、目処はついたといえる。 初期宇宙の放射優勢期に大振幅の曲率揺らぎがホライズンに入ると、揺らぎの2次項から重力波が発生すると共に、高密度領域は重力崩壊を起こし、原始ブラックホールが形成する。この形成条件は、曲率揺らぎの積分量とコア領域の大きさの2パラメタのみによって決定されることを明らかにした。これによって、重力波のスペクトルと原始ブラックホールの形成量をより密接に結びつけることが可能になる。 標準模型のヒッグス場によって観測と整合的なインフレーションを実現する方法の一つに、Higgs G inflationがあるが、この模型は再加熱期に不安定性が生じることがその後指摘された。本研究では正準運動項の高次項を加えることにより、宇宙進化の全時代において安定性を確保できることを示した。なおこの模型はBICEP2による原始重力波の生成量の最新の観測とも整合的である。 スタロビンスキーによるR自乗インフレーション模型は新たなスカラー場を必要としない簡単なモデルである。この理論を超重力理論において実現する機構はKetovらによって提案されている。この超重力版では再加熱時に他の場の揺らぎを拾ってmodulated reheatingが起こりえることを示し、非ガウス性が生成し得ることを示した。Planckの観測はこの結果と整合的であったが、ガウス分布を含んでいるので、モデルを特定する手がかりにはならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BICEP2の結果に対応するため、ペンディングとなっている論文がいくつかあるが、2014年度中にはこれらも合わせて研究成果として報告できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
スカラー場宇宙論における重力波の放出については、BICEP2の結果との比較をあわせて行う。また初年度に行ったインフレーション終了間際にコズミックストリングを生成するシナリオで、BICEP2の結果を再現できるかどうか、あわせて検討する。 なお、これまで雇用していた研究員が学振研究員に採用されたため、2014年度は通年の研究員は雇用せず、海外からの研究者招聘によって必要なアクティビティを保つ計画である。
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