2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゼーマン遷移を用いたポジトロニウム超微細構造の精密測定
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23340059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
難波 俊雄 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (40376702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 祥仁 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60282505)
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Keywords | 素粒子実験 / ポジトロニウム / 超微細構造 / ゼーフン効果 / 量子電磁気学 |
Research Abstract |
電子と陽電子の束縛系であるポジトロニウムの基底状態には、スピン状態に応じてオルソとパラの二つの準位が有り、両者のエネルギー準位の差は超微細構造と呼ばれる。超微細構造の値は理論計算値と過去の精密測定結果との間で有意なズレが有り、この原因を探るために、過去の測定の系統誤差をなくした新しい測定を行っている。 当該年度は、予備測定の結果を踏まえて測定器の改良と組み立てを行った。ポジトロニウムをゼーマン分裂させるために必要な印加静磁場の一様性を増すために、NMR測定器で磁場マップを作成し、補償コイルを設計、製作してチェンバーに取り付けた。また、ポジトロニウムの遷移をおこすための印加RFシステムの安定性を上げる事に注力した。具体的には、温度を安定化させるための空調と断熱処理を行った。また、出力パワーを常にモニターしながらフィードバックを行う事で、長期にわたって安定なRFを印加できるようにした。予備測定中に、キャビティの内部からの脱ガスが問題となることが新たに判明したため、ポンプによる排気処理系を増強し、脱ガス源であるアクリルのライトガイドを石英ガラスへと変更した。これらの改良を行った後に全体の測定系を組み上げ、本測定を開始した。測定は安定で、順調にデータが蓄積されている。 一方、熱化による系統誤差をなくすために、本測定と並行して2γ/3γ分光を時間の関数として行う測定も重要となる。このために使用する、HPGe検出器を購入し、分光用のセットアップも組み立てた。こちらも長期測定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、測定装置を組み上げて測定を開始した。今のところ安定してデータ取得できており、今後も継続してデータ取得することにより、目的が達成されると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
チェンバー内の物質による脱ガスによる影響が新たに系統誤差となりうることがわかったが、それに対する対策として、真空引きの強化とチェンバー内に使用しているアクリルを脱ガスの少ない石英ガラスへの交換により対策が完了した。このため、今後の測定には影響がないものと考えられる。 空調の改良による温度安定性の向上等、長期安定化の努力は今後も続ける予定である。
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