2012 Fiscal Year Annual Research Report
二重ベータ崩壊探索に向けた大型で高エネルギー分解能CdTe検出器の開発
Project/Area Number |
23340066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 温子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50353371)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体検出器 / ガンマ線検出器 |
Research Abstract |
ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊は、ニュートリノがマヨラナ粒子であることを実証するものであり、素粒子物理学および宇宙論において非常に大きな意味を持つ。テルル化カドミウム(CdTe)を用いた半導体検出器は、116Cdなど二重ベータ崩壊探索に有望な原子核を含むため探索の有力な検出器となり得る。しかし、CdTe結晶は、正孔の移動度が小さく再捕獲が顕著なため、厚くするとエネルギー分解能が悪くなるという欠点を持っている。そのような欠点を克服し、CdTeを用いた高いエネルギー分解能を持つ大型の検出器の開発に成功すれば二重ベータ崩壊探索の有望な検出器となる。 本研究では、信号の波形情報を用いて検出器のエネルギー高分解能化を進めている。これまで、5mm角素子2種類、15mmx15mmx10mm(厚さ)の素子の性能評価を行い、結晶(インゴット)の個体差が大きいことがわかった。本年度は、昨年度試作した薄型の素子である15mmx15mmx2mm(厚さ)の素子についてエネルギー分解能およびキャリアの移動度の温度依存性、バイアス電圧依存性を調べた。薄型にする場合には、大体積化は難しくなるが、キャリアの再結合は小さいと期待されるということと、二重ベータ崩壊探索時には、ガンマ線背景事象の除去が可能になるという利点がある。測定により、エネルギー分解能については、1.3MeVのガンマ線に対して約2%(FWHM)という結果が得られた。また室温から-10℃までの温度依存性の結果等より、分解能は、さらに温度を下げることによって向上が期待されることがわかった。 また、電極構造にコプラナーグリッドを採用したCZT素子(CdTeに亜鉛を混ぜた結晶)を昨年度試作しており、これについても性能評価を試みたが、読み出し回路系のノイズの寄与が大きく、ガンマ線のエネルギー測定はできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CdTe結晶の性質がインゴットごとに異なることが判明し、結晶の改善が行えないか検討したが、そのためにはインゴットを特別に製作せねばならず大規模な予算が必要であるため断念した。 そのため、別の方策として、薄型素子やコプラナーグリッド電極読み出しを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、薄型素子およびコプラナーグリッド電極読み出しによる高エネルギー分解能の達成を試みる。本年度の研究により、薄型素子については冷却で、またコプラナーグリッド電極読み出しについては、バイアス電圧のかけ方、前置増幅器の変更で分解能が向上すると期待されるため、この方向で研究を進める。 また、二重ベータ崩壊探索において予想されるCdTe素子の周辺での背景事象を効果的に取り除く方策について検討する。特に、CdTe素子の周囲を希ガスで充満し、希ガスからのシンチレーション光を検出することによる背景事象の除去を検討する。
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