2012 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドバンドエックス線撮像偏光検出器の開発と硬エックス線偏光観測
Project/Area Number |
23340071
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林田 清 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30222227)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線天文学 / X線偏光 / シンチレータ |
Research Abstract |
X線天体の偏光測定は、超新星残骸の磁場構造、ブラックホールの降着円盤の幾何学など、これまでの撮像分光観測ではみえなかった物理を明らかにする強力なツールである。本研究では、ワイドバンドのX線撮像偏光観測を目指す小型衛星PolariS 計画を具体的目標にすえて、コンプトン散乱の異方性を原理とする硬X線撮像偏光検出器を開発している。 平成23年度までに、プラスチックシンチレータ柱16本を位置検出型光電子増倍管を組み合わせたユニット1台を中心に、GSOシンチレータブロックを使用したユニット4台を配置し、硬X線撮像偏光検出器のプロトモデルを製作した。実験室で動作確認も完了していた。平成24年度の研究では、従来、4mm角16本だったプラスチックシンチレータを2mm角64本の細いものに変更する改良を行った。この構成によって硬X線偏光検出器としてはかつてない高い位置分解能を達成することができた。 平成24年度の研究のもうひとつの進展は、この改良プロトモデルを放射光施設(KEK-PF)に持ち込み、10-80keVの範囲の偏光X線照射実験を実施したことである。この実験のために、検出器を回転しながら測定する装置、クイックルックソフトウェア、偏光度較正のための装置を開発した。実験の結果、我々の開発した硬X線撮像偏光検出器プロトモデルが10-80keVの範囲で偏光検出、位置検出能力をもつことを実証できた。偏光検出能力の指標であるM値は20-80keVの範囲で50-60%程度と目標性能に達している。ただし、プラスチックシンチレータにおけるコンンプトン反跳電子の検出効率は、低エネルギー側では十分高いといえず、今後の課題として残っている。 また、焦点距離6mの硬X線ミラーに関してはシミュレーションでデザインを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硬X線偏光撮像検出器の開発に関しては、当初計画より進んでいる点と遅れている点がある。当初計画より細いプラスチックシンチレータと、それにマッチする位置検出型光電子増倍管を利用することにより、位置分解能を2倍向上することに成功した。コンプトン散乱を原理とする硬X線用偏光計としてはかつてない高い位置分解能を達成したことは、計画を上回る成果である。 開発した偏光撮像検出器を放射光施設に持ち込み、10-80keVの性能を検証したこと、その結果、偏光検出能力の指標M値として50-60%を得たことは、当初目標を達成したといえる。コンプトン反跳電子の検出効率は、現時点では十分高いとはいえないが、これを高めることが開発のポイントであることは認識していた。従って、この年度の達成度としては順当であると判断している。 一方で、振動に耐える偏光計構造体の開発に関しては十分な設計、検証ができていない。また、偏光撮像検出器とともに、PolariS衛星実現のために重要な焦点距離6mの硬X線ミラーに関しては、シミュレーションでデザインを検討したものの、製作方法に関しては詳細つめきれていない。これらの点に関しては計画より遅れている。 以上を総合的に判断した結果、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
硬X線撮像偏光計に関しては、現在のプロトモデルの構成を保ったまま、コンプトン反跳電子の検出効率を高める開発を行う。ひとつには、シンチレータ光を効率よく取り出す構造を検討する。シンチレータと光電子増倍管の密着面の処理、そこに挿入する光学グリース、シートなどの工夫はポイントになる。もうひとつのポイントは、データ処理方法の見なおしである。コンプトン反跳電子がプラスチック中でつくるわずかな信号をとらえるために、電気的ノイズとの分離の精度をあげることが重要である。この点に関して、光電子増倍管の各ピクセルのAD変換データに立ち返り、処理方法を見なおす。 一方で、振動耐性の高い検出器構造や、硬X線ミラーの製作方法検討、さらに、衛星システムのいくつかの懸案事項も平行して検討する。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] X-ray gamma-ray polarimetry satellite PolariS2012
Author(s)
Kiyoshi Hayashida, Daisuke Yonetoku, Shuichi Gunji,Toru Tamagawa, Tatehiro Mihara, Tsunefumi Mizuno, Tadayasu Dotani, Hidetoshi Kubo, Toshio Murakami, Yoichi Yatsu, Fuyuki Tokanai, Hirohisa Sakurai, Hiromitsu Takahashi, Shunji Kitamoto, Akira Furuzawa, Masaaki Sadamoto, Fumiyoshi Kamitsukasa et al.
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Journal Title
SPIE proc.
Volume: 8443
Pages: 84434G.,9pp
DOI
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[Journal Article] Soft x-ray imager (SXI) onboard ASTRO-H2012
Author(s)
Kiyoshi Hayashida, Hiroshi Tsunemi, Takeshi Go; Tsuru, Tadayasu Dotani, Hiroshi Nakajima, Naohisa Anabuki, Masanobu Ozaki, Chikara Natsukari, Junko S. Hiraga, Hiroshi Tomida, et al.
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Journal Title
SPIE proc.
Volume: 8443
Pages: 844323, 9 pp
DOI
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[Journal Article] The ASTRO-H X-ray Observatory2012
Author(s)
Takahashi, Tadayuki; Mitsuda, Kazuhisa; Kelley, Richard; Aarts, Henri; Aharonian, Felix; Akamatsu, Hiroki; Akimoto, Fumie; Allen, Steve; Anabuki, Naohisa; Angelini, Lorella; et al.
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Journal Title
SPIE proc.
Volume: 8443
Pages: 84431Z, 22 pp.
DOI
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[Presentation] 小型衛星 PolariS 搭載用X線散乱イメージング偏光計の開発II2013
Author(s)
定本真明, 林田清, Kim Juyong, 穴吹直久, 郡司修一, 坂野光成, 片桐惇, 岸本祐二、米徳大輔, 三原建弘, 水野恒史, 高橋弘充, 谷津陽一, 窪秀利, 他PolariS-WG
Organizer
日本天文学会年会
Place of Presentation
さいたま大学(埼玉)
Year and Date
20130321-20130321
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[Presentation] X-ray and gamma-ray Polarimetry Small Satellite PolariS2012
Author(s)
Kiyoshi Hayashida, Daisuke Yonetoku, Shuichi Gunji,Toru Tamagawa, Tatehiro Mihara, Tsunefumi Mizuno, Tadayasu Dotani, Hidetoshi Kubo, Toshio Murakami, Yoichi Yatsu, Fuyuki Tokanai, Hirohisa Sakurai, Hiromitsu Takahashi, Shunji Kitamoto, Akira Furuzawa, Masaaki Sadamoto, Fumiyoshi Kamitsukasa et al.
Organizer
COSPAR
Place of Presentation
マイソール(インド)
Year and Date
20120715-20120715
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[Presentation] X-ray and gamma-ray Polarimetry Small Satellite PolariS2012
Author(s)
Kiyoshi Hayashida, Daisuke Yonetoku, Shuichi Gunji,Toru Tamagawa, Tatehiro Mihara, Tsunefumi Mizuno, Tadayasu Dotani, Hidetoshi Kubo, Toshio Murakami, Yoichi Yatsu, Fuyuki Tokanai, Hirohisa Sakurai, Hiromitsu Takahashi, Shunji Kitamoto, Akira Furuzawa, Masaaki Sadamoto, Fumiyoshi Kamitsukasa et al.
Organizer
SPIE Astronomical Telecope & Instrumantation
Place of Presentation
アムステルダム(オランダ)
Year and Date
20120705-20120705