2011 Fiscal Year Annual Research Report
高抵抗素材を用いた次世代高輝度ハドロン衝突実験用粒子線検出器の開発
Project/Area Number |
23340072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
越智 敦彦 神戸大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40335419)
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Keywords | 粒子測定技術 / 素粒子実験 / ガス放射線検出器 / μ-PIC / LHC実験 / ハドロン衝突実験 |
Research Abstract |
次世代高輝度ハドロン衝突実験で予想される、中性子や陽子による高頻度のバックグラウンド環境下で、信号となるμ粒子などによるイベントを安定に観測するための検出器を開発するためには、中性子等の入射を起源とする放電現象が生じたとしても性能が劣化しない検出器の開発研究と、放電そのものを抑制するための試験研究の双方が必要となる。本年度は、前者に対応するものとして高抵抗電極型マイクロピクセル検出器の開発、及び後者に対応するものとして高速中性子を用いたマイクロピクセル検出器の放電特性のテストを中心とした研究を行った。 高抵抗電極型マイクロピクセル検出器の開発では、当初は従来から試作を行ってきた、導体である陰極上に直接高抵抗物質を塗布するタイプの検出器をベースに開発していたが、放電の抑制能力が十分でないことが明らかになってきたため、陰極として高抵抗物質のみを用い、信号読出しは絶縁膜を隔てた導体電極から誘起電荷として読み出す新しい方法を考案し、試作を行った。この新しいデザインについては、十分な精度を持ったものがまだ完成していないが、これまでに行った試作機をテストしたものでは、限定的ではあるが、放電規模抑制についてある程度の効果が見られている。 高速中性子を用いた検出器の放電特性のテストとしては、約1週間の中性子照射テストを、本年度は計4回行い、検出器の動作ガスや構造について色々と変化させた形の動作試験を行った。この結果、例えば検出器のベースガスとしてこれまで一般的に用いられてきたアルゴンガスに比べて、ネオンガスが優れていることや、構造体にプラスチック等水素の多く含まれている物質が含まれていると放電確率が上昇することなど、多くの知見を得ることができた。 なお、これらの成果については国内の学会・研究会だけでなく、複数の国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高抵抗電極型マイクロピクセル検出器の開発については、当初デザインの性能が十分に得られないことから、設計変更を行い試作を継続しているが、この項目については24年度までに目処をつけることを当初目標としているため、全体としては計画通りの進行である。検出器の放電特性のテストについては、現状では高電極型のもののテストまでは出来ていないが、一方で動作ガスや材質について多くの知見が得られており、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
検出器の開発については、23年度に考案したデザインのものについて、精度の良い試作を目指し、原理検証を行う。これについては、当初の計画通り、24年度中までに目処をつける。また、放電特性テストなどについては、これまで、従来型のマイクロピクセル検出器を使ってきたが、新たに開発してる高抵抗電極型マイクロピクセル検出器を使った試験も行う。なお、次世代ハドロン衝突実験であるSLHCへ向けた検出器のアップグレードとしては、高抵抗素材を使ってはいるが若干異なるタイプの検出器、「マイクロメガス」が採用の見込みとなっているため、これを推進するグループと共同開発を行うことも視野にいれていく。
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