2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340077
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川村 静児 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40301725)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 重力波 / レーザー干渉計 / 量子雑音 |
Research Abstract |
新しい実験室において、片腕の腕共振器の動作に成功し、輻射圧の反バネ効果によって引き起こされる鏡の角度不安定性を回避するための方法のより詳細な検討を行い、そして吊り下げ鏡のアラインメントの安定性を増すための改良を行ってきた。また、レーザーパワーの1%の精度での計測方法についてもさまざまな検討を行った。 腕共振器は2重振り子として吊り下げられた20mgの超軽量鏡と、同じく2重振り子として吊り下げられた1インチ鏡からなる。1インチ鏡の方にはビーム軸方向の位置制御および角度制御用のコイル・マグネットからなるアクチュエーターが装備されている。20mg鏡の方は中段マスを磁石でエディーカレントダンピングすることによって振り子の共振モードを抑えている。この状態で光を入射し、1インチ鏡の位置を制御することにより共振状態を実現することに成功した。 輻射圧の反バネ効果は、20mg鏡の角度不安定性を引き起こすことが分かっている。これに対し、我々は、1インチ鏡の姿勢制御を行うことによりこの不安定性を回避する方法を検討してきた。そこで複雑な制御トポロジーを持つこのシステムについて適切なモデルを構築しそれを使い、前年度に得られた、20mg鏡の自然の角度揺れが制御によって抑えられることを理論的に説明することに成功した。 我々の吊り下げ鏡は、大きな揺れにより平衡状態が変化したり、また時間がたつとアラインメントが変化したりして、干渉計の安定な動作を妨げていることが判明した。そこで、1インチ鏡の吊り下げシステムの安定性についてテストをおこない、鏡の姿勢にヒステリシスが存在することが分かった。 レーザーパワーの計測方法についてもさまざまな検討を行い、1%の精度が実現できることを示した。その成果に関して論文を執筆し、現在最終チェックを行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初は国立天文台において行われていた。しかし、受け入れ研究者である川村の国立天文台から東京大学宇宙線研究所への異動に伴い実験装置を平成24年3月に移動した。この後は、新しい実験室におけるセットアップに数か月間が費やされた。また、新しい実験室は、以前の実験室に比べ振動環境が劣り、干渉計を安定に動作させることが困難であった。このため実験の進展は当初の予定よりやや遅れることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、輻射圧雑音の観測のために必要なセットアップを以下のような手順でインストールし、それらの特性評価および調整を行い、輻射圧雑音雑音の観測に挑戦する。まずは、光共振器の角度不安定性を防ぐための制御システムを改良する。不安定性を避けるだけでなく、超軽量鏡の自然な角度揺らぎを抑えることも視野に入れて、本システムを最適化し、超軽量鏡の自然な角度揺らぎを抑える技術を実証する。次に、これまで使われてきた高反射率鏡を超高反射率鏡に取り換え、光共振器のフィネスを高める。また、固定の光共振器を用いて周波数安定化システムを構築し、これを動作させる。さらに他の雑音を、これまでの経験で培った様々なノイズハンティングの手法を駆使して低減し、最終的に輻射圧雑音で制限される感度を実現する。
|
Research Products
(5 results)