2011 Fiscal Year Annual Research Report
巨大誘電応答を示すリラクサー強誘電体における動的不均一性の解明
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23340082
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
是枝 聡肇 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40323878)
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Keywords | リラクサー / 強誘電性 / ナノ分極域 / べき乗則 / フラクタル / パーコレーション / 光散乱 / ブリルアン散乱 |
Research Abstract |
「リラクサー強誘電体」と呼ばれる結晶の一群は巨大な誘電応答を示すことで知られる.これらの系は対称性の高い単結晶であるにもかかわらず空間的(静的)不均一性が認められ,その物性が長らく議論されてきた.ところが最近,これらの系には本質的に「動的な不均一性(動的フラクタル性)」が同時に存在することが明らかになってきた.そこで,静的不均一性と動的不均一性との関係を明らかにし,リラクサー強誘電体を支配する不均一性のダイナミクスを明らかにすることを本研究の目的とする. 平成23年度は,代表的なリラクサー物質に対して,タンデム型ファブリーペロー干渉計を用いて,1GHz(0.033cm-1,4.1 eV)から3THz(100cm-1,12meV)程度までの高分解能・広帯域準弾性光散乱の精密分光を行った.新たに4Kの低温から~800Kの高温領域までを連続的に変化可能な高温対応クライオスタットを導入し,いわゆるナノ分極域(Polar Nanoregion)が成長を始める600K以上の温度から,ガラス的な熱伝導異常を示す10K以下の低温領域に至る広い温度範囲をカバーする分光実験を開始した. その結果得られた べき乗則光散乱スペクトルのべき(power)の温度依存性は過去に報告されているナノ分極域のサイズや体積分率などの静的な物理量の温度依存性と非常に良く対応することがわかった.これはリラクサーにおけるナノ分極域の動的振る舞いがパーコレーションあるいは動的スケーリング則にしたがっていることを初めて示した重要な結果であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広い温度範囲をカバーする分光実験がスタートしており,ナノ分極域の動的振る舞いの温度依存性が明らかになりつつあるから.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査するリラクサー物質の種類を増やし,異なるタイプのリラクサーにおいてべき乗則光散乱の性質が異なるのか,あるいは普遍性があるのか,等について詳細に調べたい.
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