2012 Fiscal Year Annual Research Report
巨大誘電応答を示すリラクサー強誘電体における動的不均一性の解明
Project/Area Number |
23340082
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
是枝 聡肇 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40323878)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リラクサー / 強誘電体 / 準弾性光散乱 / ブリルアン散乱 / フラクタル |
Research Abstract |
「リラクサー強誘電体」と呼ばれる結晶の一群は巨大な誘電応答を示すことで知られる.リラクサー強誘電体を支配する不均一性のダイナミクスを明らかにすることを本研究の目的とした. 平成24年度は,代表的なリラクサー物質に対して,タンデム型ファブリーペロー干渉計を用いて,1GHz(0.033cm-1, 4.1 eV)から3THz(100cm-1, 12meV)程度までの高分解能・広帯域準弾性光散乱の精密分光を行った.いわゆるナノ分極域(Polar Nanoregion)が成長を始める600K以上の温度から,ガラス的な熱伝導異常を示す10K以下の低温領域に至る広い温度範囲をカバーする分光を行った.また,H25年度へ繰り越した計画として, ピコ秒レーザーを用いた時間領域分極緩和測定システムを新たに構築した. 測定の結果,3桁以上の広い周波数範囲に渡って「べき乗則光散乱スペクトル」が得られた.これはリラクサーにおけるナノ分極域の集合体がフラクタルとして存在していることを初めて示した重要な結果である.さらに動的スケーリング理論との対応を見るため,状態密度に比例する「還元強度表示」での解析を進めた.その結果,還元強度のべきから推定されるフラクタル次元の値がナノ分極域の体積分率の温度変化と同様な振る舞いをし,かつ低温での漸近値がパーコレーション理論で予測されるフラクタル次元にほぼ一致した.このことからリラクサーPMNでは,1.ナノ分極域が低温になるに従って成長し,フラクタル的なクラスターを形成していること,2.フラクタル・クラスターの次元が低温に向かって大きくなり約2.6次元に漸近すること,3.巨大応答を示す室温付近では2.0程度のフラクタル次元を持つこと,などを初めて明らかにできた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・広帯域光散乱測定系を順調に運用できている. ・温度変化については極低温から800Kまでの高温に渡る広い温度範囲で「べき乗則光散乱スペクトル」を測定できており,その系統的な温度依存性を議論できた. ・動的スケーリング理論に基づく考察から,単結晶試料におけるフラクタルの存在という興味深い結論を導き出せた. ・時間領域での測定および解析は最適化の途上である.
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Strategy for Future Research Activity |
・対象物質をPMNから,PMNにチタン酸鉛(PT)を固溶させたPMN-xPT(ただしxは固溶率)などに拡張し,PTの固溶率による物性変化と「べき乗則光散乱スペクトル」との対応を系統的に調査する. ・時間領域での分極緩和ダイナミクスについて調査を続ける. ・立命館大学への異動に伴い,液体ヘリウムの利用は事実上不可能となる.そのため,極低温領域での測定には無冷媒型冷凍機を用いたクライオスタットの導入が必要となる.
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