2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノカーボン物質における量子制御とナノカーボン・フォトニクスの開拓
Project/Area Number |
23340085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェンナノ構造 / 励起子 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボン物質は、線形バンド分散やゼロ質量のディラック粒子など、既存物質にはない特徴を有している。そのような新物質において、特異に発現する様々な量子物性の理解・量子状態の制御・応用が現在重要な課題である。最近の我々の研究からナノカーボン物質の一つ、カーボンナノチューブでは励起子コヒーレンスが長時間保持されており、量子効果を観測・制御するのに適した系であることが明らかとなった。本研究では、ナノカーボン物質を舞台に特異な量子状態を観測し制御に繋げ、新たな機能性の発現を目指す。本年度は、新しいグラフェンナノ構造ならびにそこで発現する機能の開拓を進めた。具体的には、化学的な手法で作製された酸化グラフェンをターゲットにして、その発光特性を含む光学的性質を中心に調べた。その結果、励起波長に応じて発光スペクトルが大きく変化し、何らかの電子準位の共鳴が起こっていることが明らかとなった。また、そのスペクトルは励起波長に応じて大きく変化することから、酸化グラフェン中にナノグラフェン構造が存在することを強く示唆している。次年度以降、時間分解発光測定等などの新しい測定を含め、詳細に検討することを計画している。さらに、カーボナノチューブの励起子コヒーレンスについて調べた。具体的には、ホールドーピングを施したカーボンナノチューブ中において、励起子とホールの散乱に起因するデコヒーレンスプロセスを検討した。その結果、励起子-ホール相互作用により、ホール密度に応じて励起子コヒーレンス時間が短くなることが明らかとなった。今後これらの知見から発展させ、そのメカニズムの詳細や励起子コヒーレンス制御などに向けた研究へと繋げてゆくことを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新しいグラフェンナノ構造の開拓を目的として研究を進めた結果、酸化グラフェン中でそのようなグラフェンナノ構造が存在しうる知見を得た。次元度以降、この酸化グラフェンをターゲットに新しい研究の展開が期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた知見をもとにして、グラフェンナノ構造での研究を展開する予定である。さらに、キャリアドープされたカーボンナノチューブでの励起子-キャリア相互作用に関するメカニズムの詳細や、励起子コヒーレンス制御などに向けた研究へと繋げてゆくことを検討している
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