2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノカーボン物質における量子制御とナノカーボン・フォトニクスの開拓
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23340085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / トリオン |
Research Abstract |
カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボン物質は、線形バンド分散やゼロ質量のディラック粒子など、既存物質にはない特徴を有している。そのような新物質において、特異に発現する様々な量子物性の理解・量子状態の制御・応用が現在重要な課題である。最近の我々の研究からナノカーボン物質の一つ、カーボンナノチューブでは励起子コヒーレンスが長時間保持されており、量子効果を観測・制御するのに適した系であることが明らかとなった。本研究では、ナノカーボン物質を舞台に特異な量子状態を観測し制御に繋げ、新たな機能性の発現を目指す。具体的には、ホールドーピングを施したカーボンナノチューブ中において、励起子とホールの散乱に起因するデコヒーレンスプロセスが他の物質に比べ大幅に抑制されていることを実験・理論研究の両面から明らかにした。これは、特徴的なカーボンナノチューブの励起子分散に起因している。さらに、電気化学ドーピングの手法を利用し、これまでに実験的に観測されていない負に帯電した荷電励起子(トリオン)の存在を初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、キャリアドーピングを施していないカーボンナノチューブだけでなく、ホールドープ・カーボンナノチューブにおいて、励起子とホールの散乱に起因するデコヒーレンスプロセスが他の物質に比べ大幅に抑制されていることが明らかとなった。これは、他の半導体では見られないカーボンナノチューブに特有なカスプ状の励起子分散に起因している。上記の研究は、実験のみならず詳細な理論研究の結果と比較することで、微視的な物理描像の全体を理解することができた。さらに、これまでカーボンナノチューブでは実験的に確認されていなかった、二つの電子とホールからなる束縛状態である負に帯電した荷電励起子(負のトリオン)の存在を初めて明らにできた。また、これまでに見つかっている正のトリオンと同様に、室温という非常に高い温度で安定に存在することが明らかとなるなど、ナノカーボン物質の特異性に起因した新しい光物性を開拓できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からカーボンナノチューブでは、励起子とホールの散乱に起因する特徴的なデコヒーレンスプロセスや負のトリオンの存在など、様々な新しい光物性を見出してきた。今後、カーボンナノチューブに特有な励起子、トリオンなどの量子制御へと繋げてゆくことを考えている。また、カーボンナノチューブに限らずグラフェンナノ構造など、その研究対象をナノカーボン物質に広げてゆくことを計画している。
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Research Products
(6 results)