2011 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導ルネサンス-銅酸化物母物質はモット絶縁体か?
Project/Area Number |
23340098
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
内藤 方夫 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40155643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 真也 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 助教 (60442729)
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Keywords | 高温超伝導 / モット絶縁体 / MBE、エピタキシャル / 強相関電子系 / 超伝導材料・素子 |
Research Abstract |
これまで、銅酸化物母物質は反強磁性モット絶縁体であり、高温超伝導はモット絶縁体に正孔または電子のいずれかをドープすることにより発現すると考えられてきた。しかし、研究代表者らは、2008年に、酸素欠陥を取り除くことにより従来モット絶縁体と考えられてきたT'構造銅酸化物母物質RE_2CuO_4の超伝導化に成功し、銅酸化物母物質が普遍的にモット絶縁体であることに疑念を提示してきた。本研究の目的はT'-RE_2CuO_4が酸素欠損等の原因でなく真にノンドープで超伝導を示すこと、および、無限層構造銅酸化物に対して母物質超伝導の可能性を探ることである。 平成23年度は、酸素不定比の情報を詳細に得るために、これまで塗布膜に頼ってきた母物質RE_2CuO_4の超伝導化をバルク試料で実現することを目指した。過去に、LaとSmの固溶系T'-La_<1.6>Sm_<0.4>CuO_4については、アルカリ溶融塩法を用いた低温合成により、ほぼ100%の反磁性磁化を示すバルク試料を得ていたが、Smを含まないT'-La_2CuO_4については超伝導が観測されていなかった。今回、合成条件・還元条件を最適化することにより、T'-La_2CuO_4についても大きな磁化信号を観測するに至ったが、常磁性の疑いがあり、確認を急ぐ。また、高エネルギー研究所・小嶋らとの共同研究でミューオンスピン共鳴(μSR)により、母物質のCuのスピン状態を明らかにする研究も進んでいる。酸素欠陥を除いたEu_2CuO_4薄膜試料ではCuの磁性信号が弱まることが確認できている。さらに、薄膜表面から深さ方向へCuの磁気モーメントが減衰することも観測され、表面では不純物酸素の吸着が起こっていることが示唆される。さちに、無限層構造母物質SrCuO_2の超伝導化も試みている。スパッタ法によって作製されたSrCuO_2薄膜は150K程度まで金属的な挙動を示し、モット絶縁体的ふるまいではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルク試料の超伝導化と酸素不定比評価については多少遅れ気味であるが、無限層構造薄膜の超伝導化は当初の計画より進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2008年以来、研究代表者らは「高温超伝導体に対するドープしたモット絶縁体描像」に対する見直しを主張してきた。しかし、この主張が多くの研究者に受け入れられるまで時間を要してきた。一方で、最新のバンド計算が我々の主張を支持したこと、また、共同研究を通じて、多くの共同研究グループが我々の主張に耳を傾け始めている。今後さらなる共同研究の展開をはかり、我々の主張に対する支持者を増やしていきたい。
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Research Products
(8 results)