2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピンナノチューブにおけるスピン・電荷・カイラリティが創る新しい量子現象の理論
Project/Area Number |
23340109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
坂井 徹 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 教授 (60235116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 博生 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 助教 (00343418)
岡本 清美 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (10114860)
奥西 巧一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30332646)
野村 拓司 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (90373240)
利根川 孝 神戸大学, 理学研究科, 名誉教授 (80028167)
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Keywords | 量子スピン系 / ナノチューブ / カイラリティ / スピンギャップ / 超伝導 |
Research Abstract |
S=1/2の3本鎖スピンナノチューブについて、ハイゼンベルグ模型の密度行列繰り込み群と数値的厳密対角化による数値解析により理論的に研究した。その結果、以前のスピン波近似による研究により定性的に予測されていた磁場誘起カイラル秩序相の存在を定量的に示すことに成功した。また、三角ユニット内の反強磁性的交換相互作用と、鎖方向の反強磁性的交換相互作用の比J'/Jを変化させた場合に、飽和磁化の3分の1の磁化付近において、スピンギャップによる磁化プラトー相のほかに、カイラル秩序相、さらにカイラル秩序が量子ゆらぎで融解したカイラル液体相が生じる量子相転移が起きることが判明した。カイラル秩序相及びカイラル液体相は、3分の1磁化だけでなく、周辺の有限の磁化領域にも広がっており、密度行列繰り込み群の数値解析により、相境界となる臨界磁場の値を定量的に求めることが可能となった。この成果により、磁場によるカイラリティの制御が可能であることを理論的に示したことになる。このほか、以前の密度行列繰り込み群と数値対角化の解析により導かれた、スピンギャップ形成・消滅の量子相転移を、量子化されたベリー位相というトポロジカルな秩序パラメータで理論的に記述することに成功した。この成果により、スピンギャップ相とギャップレス相の相境界をより明確に決定でいる手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標であった、スピンナノチューブのカイラリティの磁場による制御についての論文が出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
磁場中のカイラリティの自由度について、密度行列繰り込み群及び数値的厳密対角化の解析をさらに進めて、空間的異方性と磁場を制御パラメータとした定量的な相図を完成させる。 また、量子化されたベリー位相を秩序パラメータとして、スピンナノチューブのスピンギャップ相とギャップレス相の相境界を決定し、相図を描くとともに、量子相転移の性質を明らかにする。
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Research Products
(31 results)