2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340110
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹下 直 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (60292760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 文子 独立行政法人理化学研究所, 無機電子複雑系研究チーム, 基幹研究所研究員 (50398898)
石角 元志 一般財団法人総合科学研究機構, 総合科学研究センター及び東海事業センター, 技師 (90513127)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超伝導 / 高圧力 |
Research Abstract |
今年度はまず、異方的な圧力による効果を検証する際に必要となる静水圧下における正しい銅酸化物高温超伝導体の転移温度の圧力相図を作るという目的のもと、常圧では最も高いTc=134Kを持つHg-1223の高品質多結晶に対する圧力下測定を実施した。この結果、史上最高のバルク超伝導転移温度であるTc=153Kを達成することができた。この実験では同じ母試料に対して施したアニール条件の違いによって、ドーピングの違う試料を用意し、同時に超伝導-圧力相図のドーピング依存性も検証している。 異方的圧力の発生に関する技術的検討も小型キュービックアンビルプレスを用いて行っている。しかしながら、アンビル形状やガスケット形状による方法はアンビルの破損等の問題がどうやらあり、費用的にも限度があるためにあまり進展は見られなかった。一方、鉄系超伝導体の母物質であるノンドープBa122の単結晶の圧力下測定において、試料形状の違いにより、以前に行ったab面が出ている薄片の単結晶に対する圧力効果と比較し、c軸に長い形状の試料では明らかに異方的な圧力の効果によるものと考えられる圧力誘起超伝導発現の必要圧力値の低下が認められた。これにより部分的にではあるが異方的圧力下の実験の先鞭をつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機械的機構による異方的圧力の発生は困難が多くあり、いまのところ進展があまりない。またこれが可能であっても、装置の出力の限界までの圧力発生を安定的に行うことができるかは検証にリスクも付きまとう。一方で試料形状による試料への異方的圧力効果の出現を鉄系超伝導体において確認できたので、当初の目的である異方的圧力下の実験を成功させるための道筋も見えてきた。特にab面の出た薄片試料に対して、明らかにab面を圧縮する圧力効果がc軸方向のそれに対して大きくなっていることがわかり、これはおそらく銅酸化物高温超伝導体に対してはTcをより有効に向上させる効果をもたらすはずである。 純良多結晶を用いた静水圧力下のTc圧力相図の実験においては、分担者の山本による純良多結晶試料合成の成功により、世界で最も高いバルク超伝導転移温度Tc=153Kを達成し、大きな反響を得ることができた。これにより、圧力による超伝導状態の研究および特性向上という手法が非常に有効であるということが示された。これらの現在の状況を考えると、おおむね順調に進展しているという評価がふさわしいものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、主に試料形状の変化による、異方的な一様圧力を具体的に銅酸化物高温超伝導体に加えた実験について、これを進めていきたい。しかしながら、特に、水銀系銅酸化物高温超伝導体のHg-1223やHg-1212などに関して、単結晶育成に技術的困難が多くある。これを克服し、さらに世界記録を更新するような非常に高い超伝導転移温度Tcの達成を目指す。現状でHg-1201の単結晶試料に関しては得られているため、この試料に対する異方的圧力印加の実験をまず試みる。また、より単結晶育成が容易であるTl系銅酸化物高温超伝導体に対しても同様の静水圧及び異方的圧力下のTc観測実験を行い、異方的圧力によるTc変化の観測を試みる。これらの実験を通じ、CuO2面による超伝導に関して、その超伝導転移温度の決定要因に関する知見を得、今後のより高いTcを持つ試料の実現に向けて研究をまとめていく。 また異方的圧力発生について、その技術開発の結果も取りまとめる方向で研究をすすめる。得られた成果については随時学術誌への投稿などを行い、また、日本物理学会、日本高圧力学会などでの学会発表を行う。
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Research Products
(7 results)