2012 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的位相による物質相:量子液体及びグラフェンでの応用と展開
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23340112
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
初貝 安弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80218495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 秀夫 東京大学, 理学系研究科, 教授 (50114351)
島野 亮 東京大学, 理学系研究科, 准教授 (40262042)
河原林 透 東邦大学, 理学部, 教授 (90251488)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グラフェン / カイラル凝縮相 / テラヘルツ / 光学量子ホール効果 / ファラデー効果 / カイラル対称性 |
Research Abstract |
理論班ではグラフェンのカイラル対称性に着目して多くの研究を重ねて来たがその多くは相互作用のない系に対するものであった。対して、本年度我々は、スピン非偏極の状況下においてカイラル凝縮相としての電子相関起因の多体状態を提案し実験結果とも整合的な結果を得ることができた。これに関しては、論文投稿準備中であり国際会議での口頭講演が決定している。 一方実験班では、グラフェンがテラヘルツ波で明瞭に光学量子ホール効果を示すことを、ファラデー効果を利用して観測することに成功した。これは、理論的に予言されており(T. Morimoto, Y. Hatsugai, and H. Aoki, Phys. Rev.Lett., 103,116803 (2009)、その実証が待たれていた。我々は、本基盤研究の研究会を契機として、SiC上にエピタキシャル成長した大面積の単層グラフェン試料の合成を行っている外部研究者と共同研究を開始し、テラヘルツ光学応答からその輸送特性を精密に評価し、観測の必要条件となる、高い均一性、低いキャリア濃度、高い移動度を有していることを明らかにした。この試料に対し、高感度のファラデー回転角は微細構造定数を単位として、グラフェン特有の半整数量子ホール効果に対応する階段状の値を示すことを見出した。理論との比較も行い、観測された現象が光学量子ホール効果であるとの結論を得た。本研究成果は、Nature Comm.誌に掲載予定である。 また、本年度も2回グループ外の研究者を招いた研究集会を開催した。 1. "Recent topics on Quantum liquids and graphene", 2012年6月18日東京大学 2. "Quantum effects in graphene and related material", 2013年3月19日筑波大学
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本基盤研究主催で開催した研究集会がきっかけとなり、実験班において新しい研究交流がなされ、外部の研究者との共同研究に発展し、具体的な成果も得られた。その成果は、Nature Communications誌に掲載予定である。理論班でも、昨年までに理論的に検討していたカイラル凝縮相のアイデアをより現実的で実験とも整合的なスピン非偏極のカイラル凝縮相に拡張することに成功し、その成果は国際会議等にて口頭発表の予定となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、研究はメンバー間の学術交流も実験グループを含めて計画通り着実に進展しており、当初の研究計画にそって着実に進めていく予定である。特に本年度は研究計画最終年であることに留意し、研究の総括、ならびにその成果を広く公表していく活動にも力を入れる計画である。
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