2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体中のフェムト・アト秒電子ダイナミクスに対する第一原理計算
Project/Area Number |
23340113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
矢花 一浩 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70192789)
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Keywords | 時間依存密度汎関数理論 / 第一原理計算 / 高強度パルスレーザー / 超高速現象 / アト秒科学 / フェムト秒レーザー / 超並列計算 |
Research Abstract |
レーザー科学の最前線で用いられている高強度パルス光は、物質の高精度測定のみならず光の能動的な作用による通信・制御・加工への応用が急速に進展している。一方、高強度光電場のもとでは電子の非線形ダイナミクスのため、通常の電磁気学による光伝播の記述が不可能になる。本研究では、高強度・超短パルスレーザーと物質の相互作用を記述する、電磁気学(マクスウェル方程式)と量子力学(時間依存密度汎関数理論)を統合したマルチスケール第一原理シミュレーション法を開発する。これによりパルス光により誘起される固体中の非線形電子ダイナミクスの特徴を明らかにし、フェムト秒・アト秒スケールで起こる諸現象に関するミクロな理解を得ることを目的としている。 本年度は、時間依存密度汎関数理論に基づきパルス光の伝播を記述するマルチスケール理論の構築に成功し、この理論の枠組みに基づくマルチスケール計算コードの開発を行った。そして、半導体結晶(Si)に対して直線偏光パルスが垂直入射するもっとも簡単な設定において高強度パルス光と物質の相互作用に対する第一原理計算に始めて成功し、弱い光パルスに対しては通常の誘電応答が再現され、強いパルスの場合には摂動展開が許されない領域での光伝播を記述できることを確認し、論文にまとめた。 また、近年アト秒パルスを用いた実験研究の進展が著しいが、我々の計算コードにおいて内殻電子のダイナミクスを記述できるよう射影法に基づく理論(PAW法)を実装し、フェムト秒パルスとアト秒パルスが同時に照射する場合の電子ダイナミクスが記述可能となるよう拡張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた、理論的枠組みの整備と基本的な計算コードの作成については、まとめた論文を作成し出版することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進については、当初の計画に沿い順調に進展していることから今後も計画に沿い進展させる。次年度においては、理論及び計算面について発展させるとともに、超並列計算機を駆使した大規模計算への取り組み、及びアト秒科学分野やフェムト秒高強度パルスを用いた計測・材料加工の分野において、実験研究との連携を意識した取り組みに力を入れて研究を進めたいと考えている。
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Research Products
(2 results)