2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体中のフェムト・アト秒電子ダイナミクスに対する第一原理計算
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23340113
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
矢花 一浩 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70192789)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超高速現象 / 高強度超短パルスレーザー / 第一原理計算 / 時間依存密度汎関数理論 / コヒーレントフォノン |
Research Abstract |
本研究は、パルス光を固体に照射した際に生じる電子ダイナミクスを時間依存密度汎関数理論に基づき第一原理から計算する方法を発展させ、超短パルス光により生じるフェムト秒からアト秒時間スケールの現象や、高強度の光により生じる非線形電子ダイナミクスを微視的に記述し、光と物質の相互作用に関する基本的理解を深化させるとともに、新奇な光応答現象を探求することを目的としている。本年度は次の2課題に関して進展があった。 一つはパルス光を固体に照射して観測される現象の一つであるコヒーレントフォノンの生成機構に関する研究である。これまで我々はSiを例に計算を行い、光の振動数がバンドギャップエネルギーより低い場合にはラマン型のメカニズムが、高い場合には実励起型のメカニズムが主要となることを理論的に確認してきた。本年は、多くの実験研究がなされてきた半金属物質であるSbを対象に計算を行い、コヒーレントフォノンの生成機構に関する考察を進めた。その結果、エネルギーギャップが無いSbではすべての振動数領域で実励起型が主要となることを確認した。また、しばしば実験の解析に用いられる現象論的な模型である2テンソル模型の妥当性を第一原理計算から吟味し、その適用限界を調べた。 もう一つは、パルス光で励起された物質がフェムト秒以下の時間スケールで示す誘電的性質の超高速変化に関する研究である。我々の発展させた計算法で、外場として与える光電場にポンプ光とプローブ光を含めることにより、数値的にポンプ・プローブ実験を行うことができる。我々はこのような数値シミュレーションにより、極めて短いパルス光により励起した物質の誘電的性質の超高速変化を、Siを例にとり第一原理計算により調べた。その結果、誘電関数の実部は自由電荷を加えたドルーデ模型でよく記述されるが、虚部は複雑な振る舞いをすることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を、おおむね順調に進めることができている。パルス光を固体に照射した場合に電子ダイナミクスを調べる研究は、Si、ダイアモンド、SiO_2といった物質群を対象に計算を遂行し、さまざまな観点から研究を進めている。また、国内外の複数の実験・理論研究グループと連携し共同研究を立ち上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
高強度パルス光と物質の相互作用に関する基礎理論で、磁化を含めた扱いや、真電荷と分極電荷を区別する方法論の開発など不十分な点があり、これらの点で知識や経験を有する海外の研究協力者と議論の機会を持ち検討を進めたい。 本研究で発展させた方法論を用い光科学の発展に貢献するため、実験グループとの協力を推進したい。平成24年度より、アト秒科学で国際的に著名なドイツ・マックスプランク量子光学研究所の実験グループと共同研究を開始しており、成果を挙げて行きたいと考えている。また平成25年度からは、類似した理論アプローチで研究を進めている海外の理論研究グループ(米国バンダービルト大、オーストリア・ウィーン工科大)との共同研究を進める予定にしており、新たな視点から研究を進めることで質的な発展を図りたい。
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Research Products
(7 results)