2011 Fiscal Year Annual Research Report
数理物理学における量子トポロジーとモジュラー形式の総合的研究
Project/Area Number |
23340115
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋上 和弘 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (60262151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 徹 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (20151970)
村上 順 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90157751)
村上 斉 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (70192771)
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Keywords | 共形場理論 / 量子不変量 / 結び目 / モジュラー形式 / 双曲体積 |
Research Abstract |
1.超弦理論における多様体の解析道具の一つが楕円種数である。楕円種数は、ウィッテンによって明らかにされたように、超対称性共形場理論(SCFT)を用いて構成でき、また特殊値はオイラー数やヒルツェブルフ指数などの位相不変量と一致することが知られている。例えば、K3曲面の楕円種数は中心電荷6のN=4SCFTを用いて表示される。モジュラー形式とも関連し、超ケーラー多様体の楕円種数はヤコビ形式となる。楕円種数はSCFTの指標を用いて展開できるが、K3曲面の場合、非BPS状態数は擬テータ函数のフーリエ係数に対応し、マチウ群の表現との関連が指摘されている。実際にマチウ群の各共役類に付随する楕円種数を構成し、表現との関連をより詳細に調べた。また、いくつかの共役類に対する楕円種数をK3ヒルベルト概形について考察し、ボーチャーズ積表示を与えた。 2.チャーン・サイモンズ汎関数積分によって結び目の量子不変量が定義されるが、幾何的な解釈については不明な点が多く残されている。幾何的な性質を与える手がかりになるものと期待されるのが体積予想である。体積予想とは、色付きジョーンズ多項式の特殊値上の漸近形が、結び目の補空間の双曲体積によって定まるとの予想である。色付きジョーンズ多項式とはSU(2)ゲージ群を用いて定義される結び目の量子不変量である。この体積予想はいくつかの結び目においてのみ厳密に証明されているが、数値実験によって多くの結び目で確かめられている。 体積予想は量子不変量と双曲幾何との関連を指摘しており、3次元多様体の量子不変量についても同じような関連性が予想される。本年度は、従来とは異なった量子群の表現を用いて量子6j記号を構成した。この量子6j記号の漸近形を解析し、双曲4面体の体積との関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
楕円種数と超共形場理論の指標との関連について、研究代表者と分担者との共同研究が予定通り進展している。 また、量子不変量の幾何学的解釈についても進展があり、双曲四面体の体積に関する知見がさらに深まった。
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Strategy for Future Research Activity |
弦理論の専門家である江口の協力を得て超共形場理論を用いた楕円種数の解析をさらに進める。モジュラー形式に詳しい金子(連携研究者)の協力も必要となる。 また、村上順、村上斉、高田(連携研究者)と活発に議論を行い、結び目および3次元多様体の量子不変量の解析を行っていく。数値計算などを用いながら、モジュラー形式や双曲幾何との関係を探っていく。
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