2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23340122
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
甲賀 研一郎 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (10315020)
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Keywords | 界面 / 濡れ転移 / 疎水性水和 / 水 / 溶媒和熱力学 / 疎水性相互作用 |
Research Abstract |
界面相転移の理論 2成分流体界面における濡れ転移の微視的モデル(平均場近似密度汎関数モデル)は,様々な種類の濡れ転移を示す.しかし,これは精密な数値計算の結果であり,解析的に解けるモデルを調べることは重要である.そこで,微視的モデルと関係のある新しい界面変位モデルの解析を行った.微視的モデルが示す一次濡れ転移,連続濡れ転移,無限次濡れ転移などが,このモデルからも得られ,その臨界挙動が解析的に得られることがわかった. 疎水性水和の理論 疎水性水和の特徴は,溶質の溶解度が低いこと(溶媒和自由エネルギーが大きな正の値をもつこと)と溶解度が温度上昇とともに低下すること(溶媒和エンタルピーが負の値をとること)である.しかし,溶媒和エンタルピーと溶媒柏エントロピーの値は溶媒和条件(定圧または定積)によって大きく変化する.このことに関連して,まず,溶媒和熱力学を任意の体積変化を許す条件に拡張した.さらに,水と単純液体を溶媒とする分子シミュレーションを行い,疎水性溶質の溶媒和熱力学量を計算した.その結果,定積条件では単純液体でも疎水性水和類似現象が容易に実現することを示した.そして,定圧条件においてこそ,水の特異性が現れることを例示した.すなわち,水は定圧・定積条件にほとんど依存せず,疎水効果を示すが,単純液体は定圧条件においては特殊な条件を除き,疎水効果類似現象を示さないのである.この差異が現れる鍵は,水特有の小さな熱膨張係数にあることを指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十分な研究時間を確保することは日常的には困難であるが,その他業務に支障なない時期に海外共同研究者の所属機関へ出張し,集中的に研究,議論を行うことにより,おおむね目的を達成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
界面相転移の理論については,今後も解析的計算を進め,さらに必要であれば数値計算で理論を検証する.また,海外共同研究者と連携し,界面におけるゆらぎの効果を検討し,平均場近似の結論の妥当性を検証する. 溶液の理論に関しては,熱力学的考察を不均一溶液系に関して例示するためのシミュレーションを行う.さらに,希薄水溶液の疎水性溶質間相互作用を精密に計算し,浸透第2ビリアル係数を温度の関数として得ることを試み,疎水性相互作用の特徴と普遍性をあきらかにすることを目指す.
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Research Products
(9 results)