2011 Fiscal Year Annual Research Report
数値モデルを用いた超大陸サイクルとマントル対流の熱的・力学的相互作用の解明
Project/Area Number |
23340132
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 晶樹 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 主任研究員 (00371716)
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Keywords | マントル対流 / 数値シミュレーション / 大陸リソスフェア / クラトン / 超大陸 / 造山帯 / 三次元 / 地球史 |
Research Abstract |
1.大陸リソスフェア(以下、大陸)の移動を実現する独自の三次元部分球殻マントル対流モデルを高度化させ、大陸縁辺での低粘性領域(WCM;実際の地球では太古代クラトン縁辺の原生代造山帯に相当)の存在が大陸の時間的安定性に及ぼす影響について調べた。本研究のモデルでは、大陸は単純化された形状で、その粘性率は海洋プレートより高いと仮定し、大陸の周囲及び内部に予めWCMを設定した。マントル対流の時間発展を計算した結果、大陸と海洋リソスフェアの粘性率比が100倍で、かつ、WCMの粘性率がマントルの粘性率と同程度である場合、大陸は地質学的時間スケール(本モデルでは、10億年以上)にわたってマントル対流によって大きく攪拌されることなく安定に移動することが分かった。また、大陸と海洋リソスフェアの粘性率比をさらに大きくした場合(1000倍)には、大陸はより長い時間(20~30億年以上)にわたって安定であることが分かった。しかし、本研究によって、大陸の時間的安定性には、WCMの存在そのものが一次的に寄与し、大陸と海洋プレートの粘性率比の寄与は二次的であることが示唆された。 2.大陸移動を考慮した三次元全球殻マントル対流コードを開発した。大陸の移動は、1のモデルで使われた独自開発の追跡粒子アルゴリズムを発展させて解いた。数億年後の大陸配置の分布と超大陸の形状の予測を試みた結果、南極大陸と南米大陸を除く現在の各大陸は数億年後に北半球に集まり、北半球に新しい超大陸が形成される可能性を示した。 3.これまで、我々及び世界中の研究グループが行われてきた、大陸を考慮したマントル対流のシミュレーション結果、及び、現在構築されつつある地質学的モデルから、大陸移動とマントル対流との間には、地球史を通して重大な熱的・力学的フィードバックがあることを議論し、レビュー論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」では、「(1)超大陸サイクルとマントル対流との熱的相互作用、(2)超大陸サイクルに伴う海洋プレートの力学的状態の変化、(3)数億年後に形成されると予想されている未来の超太陸の形状-について明らかにする」とした。(3)は本年度計画が計画通りに実施できたので、達成度は100%である。(1)と(2)の達成度はそれぞれ50%と20%で、本年度実施したモデルの高度化によって、今後計画通りに推進出来る目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に開発したマントル対流と大陸移動の数値シミュレーションモデルを高度化し、また、新たに得られた知見を利用して、地球史における超大陸サイクル(超大陸の離合集散過程)とマントル対流との熱的・力学的相互作用について解明する。特に、大陸リソスフェアがマントル対流によって自発的に分裂するモデルの開発に集中的に取り組み、超大陸サイクルが可能な限り矛盾なく実現出来るマントル対流モデルを構築することにより、超大陸サイクルに関するさまざまな地質学的モデルとの定量的な議論を意識したシミュレーション研究を実施する。
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